黒のもんもん組―猫十字社

以前、単行本で持っていた「黒のもんもん組」を、文庫で手に入れた。何を思い立ったかわからないのだが、どうも最近この手の不条理なギャグにはまっているような気がする。作品は、20年以上前のものなのだが、今でも十分通用する(と思う)。作者の猫十字社は別にシリアスな作品も多数発表しているので、こちらはいわば「裏」猫十字社であろうか。

黒のもんもん組 (白泉社文庫) 黒のもんもん組―猫十字社

この作品は、基本的に「黒のもんもん組」こと「とらじゃ」「かりた」「めりた」の三人が繰り広げるナンセンス・ギャグ・バトルである。どっかで聞いたことがあると思えなかった方は、コーヒーを思い浮かべること。まぁ、今頃はミルで自分で豆をひいてコーヒーを入れるというのも少なくなってきているが…。とらじゃは漫画家少女、かりたは男色家、めりたはゴキブリの化身?という設定なのだが、その時点でもはや少女漫画の域を脱している。そう、「黒のもんもん組」は、白泉社の少女雑誌(LaLa)に連載されていたのだ。

この三人のやりとりは、それはそれでおもしろいのだが、個人的には脇役の方がおもしろい。たこのルーちゃん、ゴータマさん、イエス君である。たこのルーちゃんはサングラスをかけた二児の父であり、とらじゃの仕事を手伝っている。ゴータマさんとは、要するにお釈迦様である。イエス君とは、イエス・キリストである。特に、ゴータマさんとイエス君のやりとりは最高である。この延長で、なんと奈良の大仏と鎌倉の大仏の一大ホモスペクタクルが見れるのだが、どうしたらこういう設定が出てくるのだろうか?

なお、文庫版では私の好きなプロレス編がカットされているようだ。プロレス編とは、ゴータマさんとイエス君、そしてなぜか「鬼」が何回にもわたってナンセンス・バトルを続けるのだが、ある回の最終ページで、「暇をもてあました鬼がシリアスになっておりました。」という下りが忘れられない。そう、鬼は非美形キャラとして登場したが、最後にはシリアスとなり、試合を一気にたたんでしまう。このシリーズが入っていないのは、非常に残念である。

この漫画のキーワードは、やはり「シリアス」ではないだろうか?本来、シリアスな作品を描いている作者のこだわりが随所に出てくる。ちなみに、三人にもきちんとシリアスな顔があるのだ。擬音もなかなかよい。少女漫画界の田村仁といったところだろうか?

プロレス編の収録された文庫版の刊行を強く望む。

コメント

  1. シュール より:

    はじめまして。
    猫十字社の検索をしていて、こちらに漂着しました。
    私にとっても『黒のもんもん組』は、忘れられないインパクトがある漫画だったんです。
    やはり私も、後に一冊にまとめられた文庫版を買ったんですが、私の好きだったお話は載っていませんでした。
    ちなみに私が好きだったのは、信州編に出て来るお母さんとザザムシ電車でした。(^^ゞ
    もちろんイエスさんとゴータマさんとの絡みも爆笑。
    今、改めて見てみると、イエスさんがゴータマさんの家で
    「…これはミニ・プッシュホン、うちはいまだにダイヤル式…」という部分は、時代の流れを感じさせますよね。
    性別の違いはあっても、同好の士を見出したうれしさで、長々と失礼しました。m(__)m
    追伸:波打った時のとらじゃの目と、チベット仏教の仏像の目って似てませんか?(^◇^)

  2. なおさん より:

    シュールさん、はじめまして。
    ザザムシ電車!その伏線はありますが、肝心のお話がないので、これも残念!と思っていました。
    ミニミニプッシュホンもそうですけど、銭湯通いとか、時代ですよね。
    波打ったときのとらじゃの目とチベット仏教の仏像の目…。そう言われれば、あの目つきは共通点がありますね。密かに影響を受けているんでしょうかね。

  3. シュール より:

    お返事、ありがとうございました。( ^ω^ )
    今週からしばらく、震災被災地へ知人のお見舞いを兼ねて行って来るので、自分がこれまでに知っている中で無条件に笑える『黒のもんもん組』を紹介してあげようと思って検索をしていたんですよ。
    幸いその知人周辺では、人命家財家屋に関わる重大な被害は無かったので、『黒のもんもん組』で笑ってもらえると思います。
    では、行ってきます。(*^ω^*)ノ彡

  4. なおさん より:

    シュールさん、ふたたびご訪問ありがとうございます!
    ご友人、楽しんでいただけるとよいですね。
    いや、きっと楽しんでいただけると思います。
    お気をつけて行ってらっしゃいませ。