万年筆還る

愛用の万年筆(MONTBLANC)のキャップをなくしてしまった。外出先(屋外)で立って会話中、手帳に留めておいたのが落ちてしまったのだ。正確には、万年筆そのものが落ちたのだが、相手の人がすぐに拾ってくれた。礼を言って受け取ったまではよかったのだが、しばらくしてペンを見てみると、「キャップがない…。」。変だ、受け取ったときには、確かにキャップは付いていた。とすると、どこに行ってしまったのだろうか。

Lost_cap_01

相手の人も、一緒に探してくれた。落ちたなら、必ずこのへんにあるはず。だが見あたらない。そういえば、最初にペンが落ちたときには音がした(アスファルト路面)が、キャップが落ちたとしてもその音は聞こえなかった。おかしい、どこに行ったんだろうと困ったが、別件で時間も迫っていて、それ以上探すのは無理そうだったし、付き合ってくれる相手の人にも悪かった。なので、その場では探すのを諦めた。

私は往生際が悪いので、着ていた服装のあらゆるポケットを探り、用事が済んだあとに何度も現場に行って路面などをくまなく探したが、やはり見あたらない。側溝のようなものもないし、排水溝のようなものもない。道路の通行案内をしているおじさんに怪しまれつつも探したが、やはり見あたらないのだ。これはもうダメかなぁ、と諦めることにした。

キャップのない万年筆は、あまり意味がないとは思うがラップにくるんで引き出しにしまわれた。しばらくはボールペンで代用するしかあるまい。別に購入するにしても、いい感じのが見つかるだろうか。何しろ、20年くらい使ってきたペン(MONTBLANCらしくブランク時期もあるが)なのだ。

さて、どうしようかと思って数日が経過したが、ある日、外出しようと上着を着ようとしたら、ぽろっと何かが落ちた。床に目をやると、そこには、なくなったはずのキャップがあるではないか。おまえ、どこに行っていたんだよ、と声を掛けつつも拾い上げ、間違いなくなくなったキャップであることを確認した。引き出しにしまわれていたペン部分に、キャップは久しぶりに収まった。

それにしても、この上着はあれから何日も着用されていたのだが、キャップの気配はなかったのである。後から考えれば、ポケットではなく、裾の折り返しの部分に落ち込んだのではないかと思いついた。これなら、ポケットを探しても見つからないし、簡単に落ちたりしない。上着を着る際に、格好付けて「バッ!」というように羽織ったので、そのあおりで落ちたのであろう。

何はともあれ、還ってきてよかった。大事にしていたものがなくなるのは寂しいものだ。え?本当に大事にしていたかって?大事かそうでないかは、なくなってからわかるのだ。

コメント

  1. kana より:

    そうそう、
    本当に大事なものは失って初めて気づくのよ~。
    何はともあれ、見つかってよかったですね。
    それにしても
    >上着を着る際に、格好付けて「バッ!」というように羽織った
    って、郷ひろみのジャケットプレイを想像しましたw

  2. なおさん より:

    kanaさん、
    > 本当に大事なものは失って初めて気づくのよ~。
    そこについて書いてくれると思ってました~。
    > って、郷ひろみのジャケットプレイを想像しましたw
    HIROMI・GOと一緒にするな!と思いましたが、あっちの方が何倍も格好良いでしょうね。
    ぽろっと落ちたときの周囲の視線が忘れられません。

  3. 野の花 より:

    読みながらちょっとハラハラドキドキをもらったキャップ物語。たかがキャップ、されどキャップ。キャップはとても大切なものですね。ずっと昔に、私がサンダルを片方失くした時ととても似ていると思い、苦笑しました。夜の車の助手席に乗る際に、ポロッと落ちて、ヘビが潜むかもしれない草むらをいくら探しても出て来ないのです。仕方なく片足素足のまま帰りました。でも、次の朝、運転手から連絡がありました、シンデレラのサンダルは車のトランクから発見されたと。暗闇で荷物を運ぶ際に、その人が一緒に積んでしまったようです。不思議でもあり、おかしくもある思い出です。

  4. なおさん より:

    野の花さん、
    そういうことって意外と誰にでもある話なのですね。
    灯台もと暗し、と言いますか実際はまさにそこにあったわけです。
    必死に探し回っていた持ち主を、くすくす笑いながら眺めているのでしょうか…。などとも思ってしまいますね。