金子勇氏の逝去と遠隔操作ウィルス事件とネット選挙

金子勇氏が逝去されました。まだ50代の若さ、惜しいことです。急性心筋梗塞だったそうですが、長い公判がまったく影響なかったとは言えないでしょう。私などは彼と並ぶべくもないレベルのプログラマですが、それでも同じプログラマとして偉大な才能が消え去ったことに残念な思いが拭えません。

この件に関して…。

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彼はP2PソフトウェアWinnyを開発した咎で検挙され、7年にわたる公判の末最終的には無罪となったわけですが、その間は証拠隠滅の恐れがあるとしてまったくコンピュータに触ることができなかったそうです。この動きの速い世界で7年とは、まったく以て残酷なことをするといいますか、本当にこの国の偉い方々は国民の時間や財産が奪われることに、まったく以て関心がないのだなぁ、とつくづく思います。

いかに無罪が当然かは、他の方々がたくさん書いていらっしゃいますからここではわざわざ書きませんが、興味のある方はこちらをお読み下さい。違った視点で、この顛末がいかにこの国に影響を与えたかが、おわかりいただけるかと思います。

金子勇氏とWinnyとともに日本が失ったもの | 池田信夫 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

似たような事件で、遠隔操作ウィルス事件で逮捕、拘留されていた4名の方々も、結局は誤認逮捕だったということが報じられています。少なくとも警察は十分な証拠のないままに逮捕し、結局は有罪を立証できなかったわけです(最終的に逮捕された片山祐輔氏は、捜査を終えて司法の判断待ちです)。

こういうことがあると、この参議院選挙から解禁されたいわゆるネット選挙は大丈夫なのかな、と思わざるを得ませんね。上記の2つの事件に共通するのは、あちら側にテクノロジをしっかり理解している人材がいないか、いてもそれを重んじ活かそうという上層部がいなんじゃないかという危惧を抱かせることです。

Winnyは、巨大な仮想ストレージを構築し、各ノードへの分散キャッシュによって、そこに入れたものは誰でも利用できるような仕組みです。あくまでも仕組みであって、そこに違法のものを入れたら、入れた人間が悪いわけです。インターネット自体が単なる仕組みですが、そこに違法のものを流したらやはりインターネットの発明者が悪い、ということになるのでしょうか?

よく言われる、銃や刃物の話と同じですね。事件が起きたら、銃や刃物の発明者、制作者が悪いということになるのでしょうか?

遠隔操作ウィルス事件のときは、コンピュータのIPアドレスだけで犯人扱いされたわけです。言ってみれば、泥棒に入られて、泥棒がその家から電話した、だからその家の住人が犯人である、と決めつけているようなものです。IPアドレスは偽装できるし、侵入されたら正しいIPアドレスを使われてしまいます。メールの送信元と同様、こういった情報を過信することはできないというのは、ネットワーク技術者の世界では常識です。

ネット選挙で何か起きた場合も、この延長で逮捕、検挙となるようなことが起きるのであれば、下手すれば自分もそれに巻き込まれる機会が増えることになります。注意したからと言ってどうにもなるものでもありません。ここはひとつ、これらを取り締まる、判断する側に、現状に見合った知識、スキルを身に付けていただき、それを正しい形で結果に反映させる運用を心掛けていただくしかありませんね。

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