本を読んでみた記「昆虫はすごい」(丸山宗利)

昆虫はすごい

虫好きの方にも虫嫌いの方にも読んでほしいのが、「昆虫はすごい」(松山宗利著、光文社新書)です。昆虫のことをちょっとは知っているのに、改めて言われると「すごい!」と感じざるを得ないお話がたっぷり。虫なんて大嫌い!という方には、その見方が少し変わるきっかけになるかもしれない良書です。

もう夏休みはとっくに終わり、夏も終わってしまうというこのタイミングなのですが、お子さんが夏休みの読書感想文のテーマにするのに最適かとも思いました。夜になれば、窓の外からは秋の虫の鳴き声が聞こえてきませんか? そもそも彼らはなぜ鳴くのか、しかも鳴く虫を嗜好対象とするのは日本人だけというのも不思議ではないですか?

私は、幼少の頃からなぜか昆虫好きでした。誰の影響を受けたのかはわかりませんが、セミや甲虫類を捕獲し、カブトムシを育て、昆虫のプラモを組み立てたり、自作の紙模型を作ったり、夏休みの自由研究は昆虫採集にするなど、今から考えればなぜあそこまでのめり込んでいたんだろうと、ちょっと不思議になります。

考えてみれば、生物でありながらメカニックさを感じさせる何かに魅力を感じていたんだと思います。あの形状、色彩、機能性、それらが組み合わさったものが生み出す何かに、途方もないワクワクを感じ取っていたんでしょう。おじさんになった今では、昆虫そのものを採集することはいたしませんが、代わりに「カメラ」というものを使い、その姿を画像として採集する、という行為に変わっています。

日本、特に都市部に住んでいると、昆虫はたまに見かけるマイノリティな存在と思いがちですが、南米のジャングルに入れば、アリの仲間だけで哺乳類の総量を上回るのだ、と書いてあります。そのとおり、実は昆虫は種類においても数においても地球の王者とも言えるべき、マジョリティなのです。

まずこの点がすごい。

この本では、なぜ数の点での多様性をそこまで持つことができたのか、昆虫が営む暮らしの巧みさ、社会性、そして人間との関わりについてそれぞれ章を設けて実にわかりやすく説明してくれています。

まぁ何がすごいかは、本を読んでみてください、なのですが…。実はこの本の筆者にも苦手な虫がいて、それは「毛虫」だとか。昆虫が好きでも、全てを受け入れられるわけではないので、そういう感覚で付き合えばよいということですね。かくいう私も、「ゴキブリ」と「カマドウマ」は苦手です(虫でないけど、ナメクジも)。これらの昆虫には、特に害というものはないのに不思議ですね。

ちなみにこの本では、それを「幼少期からの刷り込み」と解しています。親が目の敵にするので、子供も目の敵にしていくとか。私としては、テリトリーとしての家庭に入り込むことから、自然に敵対感情のようなものが芽生えたのかな、とも思っています。そういえば、私が幼少時に住んでいた住宅では、「ゴキブリ」「カマドウマ」「ナメクジ」が三点セットでした。笑(今でも夢に見ます)

巻頭には、新書には珍しいカラーの図解ページ付き。それにしても「ツノゼミ」のあの形状には意味があるのか、意味はないのか、興味深いですね。

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昆虫好きならもっと好きに、苦手なら多少は見直せる、そんな本だと思います。

昆虫はすごい (光文社新書)

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