今日から里帰りだ。里帰りといっても、自宅より都会に行くような感じなので、これといって感覚が違うということもないのだが、大きく異なるのははやり「温泉」である。普通の町中に、温泉浴場がたくさんある。以前は山あいの方など、それなりのロケーションでしか存在しなかった温泉浴場も、今は駅前や幹線道路沿いにいきなり現れる。実はこれが楽しみである(その後のビールも)のだが。
今回初日に訪れたのは、実家から車で5分弱という場所にある温泉浴場だ。600円で時間制限なしに入っていることができる。食堂もあるし、休憩所もあるので、その気になれば朝から晩までいることができる。さすがにそこまではしないが、ゆっくるできるのは確かだ。
いつもは、湯に浸かったり湯から上がってぼーっとしたり、普通の温泉を楽しむ感じになるのだが、今回は連れて行ってくれた人が進める岩盤風呂に挑戦してみることにした。岩盤風呂とは、単純に言ってみれば遠赤外線効果の強い岩を暖め、その上に寝て大汗をかくというものだ。しかしこの温泉浴場の売りは、1)特殊な薬宝玉石による強い遠赤外線効果、2)マイナスイオンと天然の香りによるリラックス効果、3)サラウンド音響による音楽と自然の発する様々な音、になるという。これらが複合的に作用し、心と身体をリラックスさせるらしい。しかも、室内は40度ほどの熱で、湿度がかなり高い。結果は目に見えている。
岩盤温泉は予約制だ。空いている時間について申し込む。定員は20名ということなので、休日などはすぐに一杯になりそうだ。間隔は30分。上演時間は25分。え?上演時間?上演とは?何か芸でもしてくれるのだろうか?
申し込むと、サウナ着と説明を書いた下敷きのようなものをくれる。ちなみに、料金は400円だ。つまり、1,000円かかるということになる。しかし、温泉に入り放題(もちろんサウナも)、岩盤風呂付きとなっては安いだろう。実にうらやましい限りだ。毎日入っても3万円だ。
時間までは、普通に風呂に入っていればいい。5分前になると、場内放送で呼び出しがかかる。集合してくれと入る。集合という言葉がいい。さっそく脱衣場に戻り、渡されたサウナ着に着替える。ちなみに下着はなし。金属類も外せと言うことだ。下敷きを持って、集合場所に行く。すでに、何名かの先客がいる。女性がほとんどというのは、やはりこう言うのは女性が好きなのだろうか?若い女性もいるので、眼鏡がないとほとんど見えないということでよかったとつくずく思う。
入浴前には、生効水(?)なる水を十分に飲むように勧められる。この意味は、出たあとにわかる。とにかく、二杯ほど飲むことにする。水の名前が怪しげな宗教のようでイヤなのだが。
浴室へは、女性は奥から、男性は手前から、順次寝ころぶように指示されるが、このときは10人もいないので適当でも問題なかった。しかし、この指示には大いなる意味があったのだ。ちなみに、入室時にジャンボバスタオルなるものを下敷きと引き替えに渡される。バスタオルというよりはタオルケットだが、これを石の上に枕を隠すほどに拡げ、その上に横たわる。すでに背中が熱い。飛び上がるほどではないがじんわりと熱い。これは効きそうだ。
浴室の中は、水蒸気と檜の香りで満ちている。係のお姉さんによれば、今日の香りは檜ということだから、日によって変わるのだろう。目を閉じてリラックスするように指示される、明かりが消えて、沈黙が流れる。
すぐに、男性のナレーションで上演開始を告げられる。ちょっとした音楽も流れる。ちょっとした解説もある。それが終わると音楽が消え、海辺のサウンド、波の音、海猫の声、波しぶき、その他が周囲に溢れる。なるほど、これが上演の意味か。これが7分ずつ×3ターン行われる。最初と最後の二分間はナレーションで、これでトータル25分だ。
しかし、汗がしとどなく流れる。これはいいやと思っていたら、動悸も早くなってくる。そう言えば、開始のときにお姉さんが「気分が悪くなったらすぐに出てくださいね」といっていたのを思い出す。なにやら身の危険を感じながらも、ひたすらリラックスするように努める。気が付けば、隣からイビキが聞こえる。私をここに連れてきてくれた人だというのはすぐにわかるが、始まって5分も経っていない。すごいリラックス効果だ。
最初の7分が終わったと告げられる。あとこれが二回、大丈夫かしら私。すでに汗はだらだら、動悸はばくばく、酒飲みで少々血圧も高い私は不安に…。しかし周囲に何も動きはない。相変わらず隣人は寝ている。じっとして、目を閉じていると、だんだんと落ち着いてくる。そうだよ、初めてだから緊張するもんな、と自分を納得させて…。
最後の数分は、もうだめかも~という感じだったが、どうやら乗り切った。口の中がからからだ。さぞかしすごい発汗量だろう。十分に水を飲んでおけという理由もわかる。出たら、すぐに水を飲めと指示される。言われなくても飲む。立て続けに飲む。本当はビールといきたいが、浴場に戻るので我慢する。しかし、気分は爽快だ。
温泉を出るときに貼り紙が目に付く。岩盤風呂の注意書きだが、イビキ、歯ぎしり、徘徊、こういう人は次回から入場を制限するとある。なるほど、こういう人は多いらしい。気持ちはわからんでもないが。
この温泉は、群馬県前橋市の、「七福の湯」という。温泉の方も掛け流しで新鮮なお湯が楽しめる。ジェット、足湯、寝湯、電気湯(座ると弱い電気ショックが!)、薬湯サウナ、普通のサウナなど盛りだくさんだ。休憩所も広いてきれいだ。国道50号からもすぐである。