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ブラックボックス化された世の中で…。

気付いていますか?身の回りの食料品の変化に。

たとえばY社のベビーチーズ。価格は同じで1割分量が減りました。大きさが、さらにベビーになったわけです。Q社のスライスチーズ。これも価格は同じで、1枚あたり1g減って薄くなっています。このほかにもK社のカマンベール入りチーズは少し値下げ+分量減でトータルではちょっと値上げ、Y社のスライスチーズも似たような感じ。

K社のちくわ、つみれ、揚げボール。こちらはなんとも寂しいのですが、細くなったちくわ、1個ずつ減ったつみれと揚げボール。価格は同じなので、実質上の値上げです。

これは、日経BP社の「日経ビジネス」2006/1/30号からのネタですが、はっきり言ってまったく気付かず、意識してもいませんでした。たいていの場合は、値上げはしても分量はそのままか、と思うでしょう?ですが、値段は同じにしていて、分量を減らしたりしているのです。または値段を下げても分量もそれ以上下げて、実質上の値上げにしていたり。

いったいどうしてこのようなことになっているのでしょう?

チーズについては、その多くがオーストラリア産のチェダーチーズ(牛乳が原料)がベースとなっていますが、その価格が上がっているのが原因。価格の上がるのにも原因があるかと思いますが、それは中国での需要が増えたから。発展すさまじい中国で、食の欧米化が進んで、チーズの需要が増えたから。わかりやすそうですが、そうではありません。

おでん種の場合は、その原料のスケソウダラのすり身の価格が高騰したのが原因。価格が上がったのは、世界的な乱獲で漁獲量が減ったからで、水揚げ量のコントロールをしているらしいです。また、ここにきてこれ以外の原因がありますが、それはヨーロッパだそうです。BSEなどの発生で魚に需要が移ったから。わかりやすそうですが、そうではありません。

両者に共通するのは、たとえば中国、欧州では、違った用途で輸入を増やしていると言うことです。中国では、チェダーチーズを輸入しているわけではなく、脱脂粉乳(スキムミルク)の形で輸入しているとか。広大な中国では、常温で保存の利く脱脂粉乳を利用している家庭が多いとか。欧州では、スケソウダラをすり身の形で利用するのではなく、フィッシュ・アンド・チップスのように切り身のまま利用します。さらに突っ込んで言えば、両者ともチーズにするより早く簡単に、すり身にするより早く簡単に、というわけなのです。生産者が、回転率がよく設備投資も軽い方を選ぶのは必然と言わざるを得ません。

言われてみれば確かにそうで、世界中の生産者が、スペックの高いものばかりを日本のために作って輸出しなければならない道理はありません。より負担が軽く効率的なものを選ぶのは当たり前でしょう。ですが、そういうことはついつい見落としがちで、買い手がいればそれに対して供給するのは当然、などという一見当たり前のように見える世の中にどっぷり浸りきってはいないでしょうか?

メーカーの目に見えない努力によって、上記のほかにもいろいろある危機には直接触れることなく、感じることなく食生活を送っていられる私たちですが、ある日突然その和がぶっつりと切られてしまう可能性のあることは、どうこうするということではなくても認識しておく必要があるのでしょう。

で、最後に遺伝子組み換え大豆を実験的に栽培してみた北海道の農家の方のエピソードがあるのですが、この大豆は除草剤に耐性があるので、農薬の使用量も減らすことができ、コストも半減したと言います。ですが、北海道の条例では、遺伝子組み換え植物を栽培してはいけないことになっているらしいのです。なので、おおっぴらにやったら罰金刑もあり得るそうなのですが、果たしてこれは正しい状況でしょうか?

私も、遺伝子組み換え植物はできるだけ避けるように脳はプログラムされていますから、いくら安くこれらの作物、加工製品が出ていてもなかなか手は出さないでしょう。それはなぜかと言いますと、遺伝子組み換え植物には、予測できない危険性がある、とされているからです。除草剤に耐性のある大豆が、果たして人体に対して有害に働かない保証など何もないし、だからこそこれらの摂取を避けようとするわけです。

納豆、豆腐、身近な食べ物では、多くが「遺伝子組み換え大豆を使用していません。」の表示があり、それらを優先して購入するようにしています(節分に蒔く豆さえもそう)。が、その大豆の自給率はたかだか16%で、多くを米国やカナダから輸入しています。そして、米国やカナダの遺伝子組み換え大豆の割合は80%, 50%ほどなのです。ですので、意識して遺伝子組み換え大豆を輸入しない限り、それらの国内における割合はどんどん増えることが予想されるでしょう。

残念なことに、栽培が容易なことから、遺伝子組み換え大豆に切り替えて栽培する農家が輸出国では増えており、遺伝子組み換えでないものを確保するのが難しくなっているそうです。ですが国内の購入層は変わらず「遺伝子組み換えでないもの」に絶対の信頼を寄せているそうで、ここに両者の大きなギャップがあると思わざるを得ません。

この件については、はっきりした意見は言えません。遺伝子組み換え大豆が安全なのか、危険をはらんでいるのかは、非常に科学的な問題なので、そこまでの知識は私にはありません。ですが、あらゆることに100%というものはないという原則の下に立って考えれば、遺伝子組み換えで減農薬、環境の負担も軽い、農家の負担も軽い、という選択肢か、あるいはあくまでも遺伝子組み換えでないにこだわり、もしかしたら残留農薬の危険も高く、環境や農家に負担をかけ、しかも高価なものかという選択肢を、選ばなければならないときが来るのでしょう。

我々消費者はわがままで、消費者の要望は常にメーカーが叶えるもの、それが市場経済だという思いこみが実は幻想であったというのは、至極当然のことで、それに気付いたときにはある種のショックを覚えました。あまりにシステム化が進み、ブラックボックス化が進んだ世の中では、その先にあるものへの想像力が鈍りがちですが、ときにはそういった彼方への想像力を働かせることも、いや意識して働かせることが、便利にすっかりひたりきった我々には必要なのではないでしょうか?

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