何年も前に買ったこのコミックを、今でも時折取り出して読んでいる。いったい何に惹かれて読んでいるのでしょうねぇ。
このコミックの原作は久住昌之。妙なリアリティのあるストーリーを作る作家だが、それとリアルな画風の谷口シローが合体した。コミックオタクではない私には、そんなことはどうでもいいのだが。
このコミックは、自営の輸入雑貨商人である主人公(実は名前は最後までわからないのだ)が、日々の食生活の記録を綴ったようなものである。お昼に何を食べて、夜に何を食べて、夜食はこうである、といった感じだ。だが、そんなものが面白うはずがない。だから、ほかに魅力があるのに違いないのだ。
私は、実は外食嫌いで、できれば外で食べたくない。外食嫌いというのとはちょっと違うかも知れないが、ひとりでわざわざひとりで食べたくない、そういうスタンスだ。連れがいるとか、美味しい食事を楽しい会話で、というときには大歓迎なのだが、この主人公も食べるときはほとんどひとりだ。というか、基本的にすべてひとりと言っていい。それがこのタイトルの所以なわけだが。
ひとりで食事を採る、外でも、中でも、お店に入っても、何かを買っても、そういうときの心情を見事に表している。どのお店にはいるのか、そのお店は気に入るか、席についての葛藤、目当てのお店がなくなっていたとき、ひとりの食事をどう準備するか、どこが満足点なのか、期待を裏切られたとき、お店の人や客とのコミュニケーション、そういった要素がすべて満たされている。
そうだ、ひとりにとって食事は一大イベントであり、決心を要することなのだ。
そして、できればベストの結果を所望するものなのだ。
私は、この主人公が好きだ。顔はいいし、格闘技をやっていたのかいい体をしている、過去には有名女優との交際もあり、ほかにもいろんな女性との過去があるようだ。クルマはBMWかVOLVOで、自宅とは別にオフィスを持っているようだ。だが、妙な庶民的感覚、ヌケ加減が、共感を呼ぶ。
ひとりで食事をし、それでいて結果には最高の満足を得たい場合、どうすればいいか?そんな解はこの本は出していないわけだが、ひとりの食事になんとなくの違和感や疑問を持っている人が読めば、自分の考えていることなどなんでもないことだと思わせてくれる作品だ。