サブタイトルは、「140億光年のすべてが見えてくる」。最新の観測データでは、宇宙の年齢は137億光年ということらしいから、3億光年の誤差が出てしまっているが、この際そんなことはどうでもいいのだ。宇宙の好きな人ならもちろん、また子供のころ天文が好きで、そんなことは最近忘れていたが、また興味が蘇ってきたという大人にも読んでもらいたい本なのだ。
宇宙のことは、最近何かと話題になる。新しいところでは、冥王星が惑星でなく矮惑星になったとか、惑星の定義が決まったとか、そんなところだろうか。だが、そんなことをしていると、宇宙の数値でしか捉えられなくなる。冥王星の直径がわかったところで、冥王星の主成分が何であるかは、案外と知らないのではないだろうか?海王星はどうか、天王星は?太陽系でもっとも高温な惑星は、最内周にある水星ではなく、そのひとつ外側にある金星なのだ。ではなぜ金星の方が熱くなるのだろうか?そういったことに興味を持ったら、本を見てみたい。幸い、今は百科事典でなくとも、安価でコンパクトな本がたくさんある。ネットの情報もいいが、ページをめくりめくりあらたな発見を得たいものだ。
この本は、タイトルのとおりに、宇宙の歴史と姿、銀河系、銀河系その他の星々、太陽系、といった順で内容が展開されている。全体を覆うのは、美しい写真と著者自らによるイラストである。これが、コート紙に精細なグラビア印刷で現れる。価格の1,890円というのは少々高いのではないかと思ったが、内容の充実度から言えば、むしろ割安に感じる。長く手元や家の本棚に置いて読まれる本としては、まったく高くないはずだ。逆に、これだけのものを1,890円で売ることを前提に作ることができるのには、出版社勤めとして感心する。印刷、用紙代はともかく、イラストと原稿料でかなりのところをいくと思うからだ。著者とイラストレーターが一緒だからなせる技か、つまり著者としては相当のサービスを行っていると思っていい。そう思って見て、読んでみたい。
残念なのは、造本の仕様なのか、扱いが悪かったのか、本の真ん中あたりで背が割れやすいということだ。ちょっと広めに拡げて読んでいると、真ん中あたりがパカッと割れて、ページが抜けそうになる。厚めの紙を使っているせいもあるからだろうが、せっかくのきれいな紙面なのだから、もう少し気を遣って欲しかった気もする。我が家の本は、そのページだけセロテープで固定されている。