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怪しい奴ら

これ、会社に持って帰れないんでもらってくれますか?

その日、私は仕事を終えて帰路についていた。時間は、夜の11時くらいである。さて、もうそろそろ自宅かというとき、歩道を歩く私の横に、一台のセダンが迫り、少し後ろに停車した。

すいません、すいません。

ちょっと東北なまりが入っているその男は、セダンの助手席から私に話しかけた。道でも聞きたいのかと思い振り返ると、高そうなスーツを着込んだ小柄な中年男が、にこやかな顔で助手席から顔を出し、こちらを見ている。車は、日産の高級セダン、黒色だ。後部座席はスモークガラスになっている。ちょっとやばいかも、と直感が注意を促す。

道を聞きたい訳じゃないんですけどぉ…。

この夜中に、道を聞きたい訳じゃないのに話しかける理由って何だ?この通りは、駅に通じるので結構交通量も多く、タクシーも多いので、人をさらうには適当な場所ではない。しかも、さえない風貌の中年男をさらう理由も見つからない。いったい何だ?と訝しがっていると、その男は続けた。

これ、会社に持って帰れないんでもらってくれますか?

男はこう言い、何かを突き出した。箱のように見えるが、そこには腕時計、しかも高級そうな(金色に光っていたので)ものが2個、台座にはまっているように見えた。なぜ腕時計なんだ?会社に持って帰れないって、何だ?一瞬のうちにいろいろ思考が交錯したが、当たり前のように口から出た言葉は、「いえ、結構です。」。すると、男はいきなり無表情になり、箱を引っ込め、窓が閉まり、車は急発進した。

いったい何だったんだろう。あの腕時計を受け取っていたら、果たしてどうなっていたのか。新手の詐欺か、それとも拉致るのが目的なのか。拉致なら、下手に話しかけず、後部座席から人が出て連れ込めばよろしい。とすると詐欺か。受け取ったとたんに、取引成立か。にしても無理があるような。多分、同様のことが誰か相手に行われているのだろう。

怪しい…。それ以前に怖い。情報を求む。

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