この週末は、恒例の丹沢の麓に赴いたのだが、すっかり騙されてしまった。強い日差しの中、好きな写真撮影に高じていたが、遠くから雷鳴が聞こえ出すと、あっという間に暗くなった。いやはや、山の天気は変わりやすいと言うが、そんな山と言うほどの場所ではないのである。それでもこの変化の早さには、油断ならぬと思った。
幸い、谷状の湿地帯から上ると、そこには東屋があるので、雨宿りさせてもらうことにした。雨具を持参していたので、車を停めておいたところまで行くこともできたが、なぜか雨が上がるのを待つ気になった。急な雷雨だし、上がるのも早いだろうという見込みだったが、結局は1時間半ほども足止めを食う形になった。その間に何をしていたかと言えば、頻繁に光る稲妻を何とかカメラに収めようとしたり、携帯で雷鳴を録音したり、カメラ内の写真を整理したりと、今から思えば何と非生産的なことをしていたのかという感じだ。
だが、雨宿りをしていると、面白いことに気付く。雨が降り出したあたりまでは大きく鳴いていたヒグラシは、温度が下がりはじめると徐々に静かになる。その替わり、視界の中をたまに行き来する透明な昆虫が目に付くようになる。ヒグラシは、どういう訳か割と低いあたりに留まっていて、近づくとふっと飛び立つのだが、音もせず、近くの木に留まったりする。本当に、深く薄暗い山の中が似合うセミだな、と思う。かんかん照りの中で暑苦しく鳴くのが似合うアブラゼミとは大違いだ。
雨が上がったので、外に出てみる。普段から人気もないし、車も少ないこの道も、この日はさらにひっそりとしている。いつもは暑い中畑仕事をしているおばあちゃんも、この日は不在であった(当たり前だ)。野菜の直売所を物色する。基本的に100円均一であるここの売り物は、この日はナス、キュウリ、インゲン、ジャガイモ、などであった。冬場には、ミカンを売ってくれる。一袋100円だが、甘くて美味しいのでいつも買っている。
路面にうっすらと漂うもや。しかし遠くを見ると、山あいから立ち上る雲(?)。ひとしきりの雨の後、暖まっていた地面から蒸気が立ち上るといった感じだ。
ちなみに、家に帰り、「すごい雷雨だったねぇ。」と言うと、「何それ?」という返事。雷雨は、丹沢方面だけの現象だったようだ。横浜のあたりは、雷が鳴っていた程度であったという。車で1時間弱の場所で、こうも気候が違うのだなぁ、と思う。