仕事を休んで、近所をうろついてみることにした。たまたま、工事で車が出せず、近場をうろうろするしかないということもあるのだが。自宅の近所には、「美しの森」という冗談のような名前の一画がある。もとは湿地帯で、さまざまな植物相が見られる貴重な風致地区だったらしいのだが、デベロッパーの圧力に押されてか、川崎市は開発に許可を出したらしい。今では、ただのマンション街と化している。横浜市側から見れば道路は閉鎖されていて向こうがどうなっているのかわからない状態が長い間続いていたが、いざ道路が通じてみれば、向こうはただのマンション街であった。
長い間ここに行くのはためらっていたが、ついにこの日に出向いた。マンション街とはいえ、その一角に申し訳程度の公園を残したと聞いている。そこが、「宮前美しの森公園」である。
とって付けたような看板。このフェンスの成り立ちといい、妙に人を寄せ付けない雰囲気がある。
かつてはこんなヤブだったのだろうと思わせる鬱蒼とした茂みに、オオカマキリ。
中途半端な広場。
立派なケヤキが立っている広場。向こうでは、さらにマンションを新築している。いったい、いかほどのマンションを造れば気が済むのであろうか?
反対側に回ると、そこにも公園があった。湧き水がある。水源は不明。
「ホタルの生活史」とある。ということは、ホタルがいるのか?とてもそんなように見えないが…。住民にも当局にも見捨てられたという感じの池が、妙に悲しい感じがする。
水はよどみ、流れはないが、こんなところにホタルが?実際にいるのかは、その季節に見ないとわからない。だがトンボさえもいない池に、果たして…?
ここを読めば、実態がわかる。「かつて」ホタルがいたのだ。いろいろ書かれているが、この池には「ニシキゴイ」がいるのを目撃した。なぜにこんな魚が?と思っていたが、誰かが放したのだろう。
ここまで紹介してきて、ばからしくなった。本気さが感じられない。宅地化を承認するにあたっての条件は、完全に放棄されているように見える。申し訳程度に緑と水を残し、きちんと管理していますよというフリ。広さも十分でないから、こんなところにカワセミが来るわけがない。
こんな逸話を思い出した。ある男が、不動産屋に環境のよい家を紹介してくれと依頼した。さっそくその不動産屋は、男を連れて緑豊かな環境のよい土地を紹介した。男は気に入り、不動産屋に「で、物件はどこに?」と尋ねた。不動産や曰く、「イヤだなぁ、旦那。物件は、これからここを潰して作るんでさぁ。」
洒落にならない、後味の悪い話である。