久しぶりの「辛いもの探検隊」です。今回訪れたのは、このシリーズの前回「辛いもの探検隊―郷味屋の刀削麺」にて最後に何気なく書いた「世界一辛い麻婆豆腐」のお店です。この「世界一辛い」に惹かれて、今にも雨の降りそうな中、いつものN氏とともに六本木まで出向きました。場所は六本木ヒルズの目の前、「胡同三辣居」というお店です。
本当に「世界一辛い」麻婆豆腐がいただけるのでしょうか?「俺は世界一辛いにするぜ!」「ボクは中間くらい」と期待に胸を膨らませつつ、芋洗坂を進みます。ちなみにN氏は晴れ男、私は雨男ということでしたが、今回は晴れ男に軍配が上がり、戻るまで雨には降られないで済んだのでした(最近は私の雨男としてのパワーも落ちているようです)。
さて、お店に着きました。先方から向かってくる自転車の人といい、妙に中国っぽさが漂います。
さっそく、外でメニューをチェックします。ところが?「世界一辛い」のフレーズは今回は見当たりません。写真のメニューのほかに、黒板に描かれたメニューもあって(上の写真参照)、そっちを見ても「世界一辛い」のフレーズが見つかりません。う~む、おかしい、以前に見たものは、幻だったのでしょうか?
腑に落ちないまま、とにかくお店に入ることにします。中で聞いて、とにかく辛くしてくれ!と頼めばよいでしょう。木の引き戸を開けて、中に入ります。二人だと店員の女の子に告げると、窓際のテーブル席に案内されました。アレ?意外と狭い?4人掛けのテーブル1脚、2人掛けのテーブル1脚、あとはカウンターだけです。なのに調理人は3人もいる…。これってアンバランス、なのでは…?
この謎はすぐに解けました。レジの後からいつの間にか人が湧いてくるのです。正確には、そっちに通路があって、別室があるのでした。これで、客がいないのに精算だけが行われていく、という謎も解けたわけです。
お茶とメニューが運ばれてきます。お茶は脂っこい料理を出すお店らしく、プーアール茶のようです。ポットにたっぷり入っていますので、おかわりも大丈夫です。日替わりメニューも案内されますが、残っているのは冷たい麺類のみということで、却下です。ということで、とにかく一般のメニューから「四川風麻婆豆腐定食」を選択します。やはりここにも「世界一辛い」のフレーズはありません。二人とも、とにかくこれを注文します。
N氏は、女の子に「世界一辛く」と伝えました。わかったのかわからないのか、とにかく注文は(中国語で)厨房に伝えられました。注文が伝えられたとたん、厨房の中の調理人の目つきが厳しくなったように見えます。「こいつら、只者(尋常)じゃない!」と中国語で思ったのでしょうか?ついでですが、餃子5個も注文しました(これが正解でした)。
料理はすぐに来ました。まず、スープと付け合わせの豆腐(木綿豆腐をネギと和えたもの)が来ます。スープは、豆腐となめこ、そして溶きタマゴです。N氏のスープの容器に豪快にタマゴがぶっかっかっていたのは、いかにも大陸的豪快さから来る愛嬌でしょうか。
本体(麻婆豆腐)もすぐに来ました。え?こんなに早く?という感じです。ものの1分もかかっていないのでは…?確かに、豆腐、豆板醤、鷹の爪、挽肉、麻辣油などを合わせて炒めるだけのものですが…。最初は、「世界一辛い」を特注したN氏のものです。
ん?何かこぢんまりとしている…。だけど色が濃い、辛そうな感じがします。鷹の爪もたくさん、大量の油、うん、これは極めた辛さを予感させます。しばらくすると、「普通の」を頼んだ私のものが来ます。
ん?見た目にどこか違う?まぁ、よく見ればなのですが、色の濃さが違う、鷹の爪の数が違う、そんな感じです。つまりこれは、トウガラシの数が違う、豆板醤の量が違う、そんなところなのだと思います。ちなみに、ご飯は結構量が多いです。では、一式を写真に収めてみましょう。
それにしても、中華の器というのは、なぜにこのように愛嬌がないのでしょうね。白一面といえばキレイですが、和食の色とりどり、形とりどりの器になじんでいると、ちょっと物足りなさを感じます。
では、食してみましょう。ということで、「交換」の儀式を行います。お互いに、メインのおかずである「麻婆豆腐」を交換します。それで、辛さの違いを実感しようというわけです。交換されたものは、お互いのご飯の上に直接盛ります。で、かっ込みます。うん、麻婆豆腐の味がする、って当たり前です。
何だか豆腐がぬるい…。
いきなりこれが感想ですか。辛いとか、そういうことではなく?でも、アツアツの豆腐を警戒していた私には、真っ先に浮かんだのがこれです。早く出てきた謎が解けました。要は、加熱が足りなかったのです。なんてこった!スープの方がアツアツだぜ、こりゃ。
でもまぁ、味はよいです。辛さは、結構来ます。花椒のあのしびれるような辛さではなく、トウガラシによる定番の辛さです。これがご飯に合います。交換した分は、あっという間に平らげて、自分のものを責めにいきました。
としているうちに、餃子も来ました。麻婆豆腐を食べ進めながら、「餃子、来ないね」なんて言っていましたが、目に入るのは餃子を仕込んでいる料理人の姿…。まさか今頃仕込んでいる?とか、まさかね、とかやっていましたが、それは杞憂だったようです(当たり前)。
何か、見た目に普通です。というか、味も普通に美味しいです。以前に行った担々麺のお店でもそうだったのですが、本体はこってりでも、餃子はすごくあっさりというケースも多いです。麻婆豆腐の間の、よいアクセントになります。
というのは、付け合わせが、「タマゴと豆腐となめこのスープ」に「木綿豆腐を崩してネギと和えたもの」なので、要するに「豆腐ばっかり」なのです。麻婆豆腐をご飯と一緒にかっ込みながら、別の味を求めようとするとそこにも豆腐があるのです。なので、私たちは結局付け合わせは最後に食べるような感じになり、その替わりに餃子をつまんでいたという感じです。
私などはおおかた食べ終わろうという頃、N氏が意外な行動に出ました。「ご飯、おかわり!大盛りで!」「え?ここってご飯おかわりできるの?」「さあ?」まぁ良いですが、ここにきてご飯の大盛りおかわりとは、細身のN氏とは意外な組み合わせでしたが、当人は意外でもないようです。よく見れば、N氏の麻婆豆腐はまだ半分くらい残っていますし、餃子も残っています。大盛りご飯には相手として不足なし、という感じでしょう。
これが大盛りご飯だ!
これも結局平らげて、お店を出るのですが、気になるのは会計ですね。果たして「おかわりご飯」の扱いはどうなっているのか?ドキドキして待つと、金額には頼んだ分の金額しか含まれていません。やった!おかわりご飯は無料だったんだ!言ってみるもんだね!とか喜びながら、帰路につきました。
豆腐がぬるっこいとか、豆腐づくしとか、いろいろありましたが、味はよかったので結果は満足です。次は私も「世界一辛い」にしてもらい、チャレンジしてみましょう。というか、あれが「世界一辛い」のかは謎で、以前に見た「世界一辛い」の謎も解けていません。おそらく、「世界一辛い」のが出てくる日は限られているのではないか?と推理するのです。
またのチャレンジをお待ち下さい。次回は、N氏の特別寄稿、第2弾です。