いい歳こいた中年が少女漫画かよ!と思わないで下さいね。せめて、これくらいにしておけばよかったのですが、これ、好きなんすよ。あ、老後の楽しみに、と思っている人は、この先を読まないで下さいね。
秋田書店の少女漫画誌「ボニータ」に連載されていた作品「やじきた学園道中記」の文庫版です。
一言で言えば、「少女漫画の皮を被った少年漫画」というところでしょうか?
絵は完全に少女漫画、お目々ぱっちりに長いまつげ、8頭身の登場人物に男女ともに美形揃い。ところがお話ときたら…。少年漫画に必須の、正義、友情、仁義、すがすがしいまでのカッコよいストーリー展開がてんこ盛りです。
簡単な設定を申しますと、学園ものです。しかも、時代劇の要素も入っています。このあたりは、タイトルからも想像がつきますよね。
そして、「やじきた」とあるように、主人公はやじさん、きたさんです。もちろん少女漫画なんだから、女の子ですよ。この二人がさまざまな事件に飛び込んで、敵を成敗し一件落着というのが基本的なストーリー。
やじさんこと矢島順子は、長い黒髪にぱっちりお目々のお嬢さん風で情けに弱く気っ風がよい。これに対してきたさんこと篠北礼子は、ショートカットのクールな才女。見た目も性格も対照的な二人は、実はものすごく腕っ節がバカみたいに強い。ほとんど女の子にはあり得ない強さなのですが、その腕っ節を買われて、問題のある学園に転校してくるのです。
敵は番長連合、暴力団。校内の悪の組織だったりします。「やじきた」ですから、殿様に忍者も出てきます。台詞は時代がかっています。美貌の二人が、バタバタと敵を倒します。しかも性格が気持ちよい。この作品全般に言えることなのですが、登場人物の性格がとにかくよいです(悪役を除く)。とても高校生とは思えないデキた大人っぷりに、私のようなできてない大人はちょっとしたコンプレックスを感じる始末。
ひとつのお話が終わるたびの、ちょっとした爽快感を味わいたくて、何度も続けて読んでしまいます。編を重ねるごとに長編になり、お話も複雑になっていきますが、だんだんと「箱根」「日光」「伊豆」などの土地に根ざしたお話になり、ちょっとしたガイド風にもなって楽しめます。これこそ、「道中記」でしょう。
まぁ、そんなに転校ばかりして大丈夫かとか、見た目は普通の女の子がそんなに殴り合いをして大丈夫かとか、なんでみんなそんなにできすぎているのかとか、野暮なことはいいますまい。そう、この作品は、自分もそうなりたいという、仮想現実に浸るものなのです。
なんかこう、まっすぐなお話を読みたい、という場合にオススメです。