「美味しんぼ」と言えば、連載開始25年を迎えたか過ぎたかという大作ですね。青年コミック界の「こち亀」と言われるにはまだ早いでしょうか。後世の各種の作品にも影響を与えて数多のパロディのネタにもなったこの作品を、何を血迷ったか今頃改めて1巻目から読み直しているのですが…。
ビッグコミックス版。
なぜ今頃読むのか?現役の作品ですから今読んでもまったく問題ないのですが、あえて古い作品を読むのがよいと申し上げておきましょう。初期の作品は、典型的な日本人好みの構成、勧善懲悪、グルメコミック界の水戸黄門とも言えるでしょう。話のわかりやすさと一緒に食べ物のちょっとした蘊蓄も味わえるということで、今読むとすごく新鮮です。
ちょっとはてな(?)が付き始めたのは、社会問題やイデオロギー的な要素が入ってきた頃ではないですかね。捕鯨問題、対韓国、対中国、対オーストラリアや対米国など。これはこれで問題提起の意義はあると思いますが、こういった要素が入ってきたときに中立を保つのは難しく、作者の信条などがもろ入ってきたり、前提知識を持たない人には非常に危険な話ばかりになってしまったと思うのです。
かくいう私も、けっこう鵜呑みにしていた部分があって、今に思えばとんでもないことが書かれていたんだなぁ、と思うこともしばしばです。いろいろ思うところがあって、リアルタイムに読むのはやめてしまいました。
今読んでいるのは、当時の「ああ、こんな話あったよなぁ」とかいう懐かしさと、その後どうなったか知りたいという怖いもの見たさが両方あると思いますね。その後、私もいろいろ研究したので、書かれていることを改めて読んで、思いを新たにしたいということもあります。
人の言うことや書いたことを鵜呑みにしないで自分の舌で味わって考えろ、と主人公の山岡さんもしょっちゅう語っていますが、実際にはこの物語の言うことを鵜呑みにしてしまう人も多いわけで、作者の期待しているのはこの物語をベースに自分なりにものを考えろ、ということなのかと深読みしたりもします。
そういう気持ちで改めて読んでみると、思うこと考えること気付くことはたくさんあって、楽しいものです。読むなら、文庫の方がよいです。中古品も大量に流通していますので、安く探して下さいませ(出版社勤務としてあるまじき発言)。それにしても巻数が多いですが、まだ10巻目…。
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