今回は、電算写植についてである。
電算写植は、文字どおりコンピュータによって文字の割り付けの指示を行うものであるが、一口に電算写植といっても、文字印字の指示の方法、文字の印字方式に世代によってかなりの違いがあるようである。
まずは、わかりやすい印字方式の違いについてまとめてみよう。
初代の電算写植機は、手動写植機と同様の原理で文字の印字が行われていた。
光源(ランプ)、文字盤、レンズ、プリズム、印画紙、という構成である。
フォントに相当するものが文字盤であることから、アナログ写植機とも呼ばれている。
写研では、「SAPTON(サプトン)」と呼ばれるシステムがこれに相当した。
1960年頃の話である。
次の世代は、フォントをデジタル化し、プログラムによって処理した文字画像をCRT(Cathode Ray Tube)いわゆるブラウン管に投影し、それを光源として直接印画紙に印字する方式である。
初代機における文字盤はデジタルデータに置き換えられ、文字サイズや変形を決めるレンズはプログラムとCRTに置き換えられた。
フォントがデジタル化されたことから、デジタル写植機と呼ばれている。
写研では、「SAPTRON(サプトロン)」と呼ばれるシステムがこれに相当した。
文字を主に扱うことで、「タイプセッタ」と呼ばれている。
電算写植を意味するCTS(Computer Type Setting)は、ここから来ている。
1977年頃の話である。
さらに次の世代は、デジタル化したフォントを扱う点は同じだが、プログラムが画像や線画を扱うことができるようになっている。
また、光源はレーザとなっており、回転する反射鏡によって印画紙に印字する方式となっている。
写研では、「SAPLS(サプルス)」と呼ばれるシステムがこれに相当する。
文字に加え、画像(=イメージ)を扱うことができることから、「イメージセッタ」と呼ばれている。
1985年頃の話である。
写研以外のメーカーで言えば、1980年頃にモリサワがLinotype社のCRT方式デジタル写植機をベースに日本語に対応させた、「Linotron(ライノトロン)」と呼ばれるシステムを開発している。
私が電算写植に関わったのは、実は写研のシステムではなくモリサワのシステムが最初であった。
組版ということから言えば、電算写植機の原理的なことはさほど大きなことではない。
(まったく関係ないとは言えないが)
それよりも、文字印字の指示方法の変遷の方が重要かもしれない。
次回は、文字印字の指示方法、すなわち電算写植における組版について書いてみよう。