今日の最近読んだ本の紹介は、高野和明の「13階段」。ちょっと前に「ジェノサイド」を紹介したけど、今回は高野氏のデビュー作である江戸川乱歩賞受賞作だ。そういう意味で、氏の原点とも言える。江戸川乱歩賞と聞くと推理もの?猟奇もの?とか怪奇もの?とかそんなものを連想してしまうけど(ブログ主だけか)、中身は社会派のサスペンスである。
中身は、13階段というように…。
死刑囚を処刑するための絞首台に上がる階段の段数が13あると言われている。というように、この作品は死刑がテーマ。死刑囚樹原亮の無実を晴らすべく、矯正処遇官南郷と仮釈放中の有期刑囚三上がある者に依頼され、さまざまな謎を解くというお話。
死刑を扱うだけあって、死刑に関する知識は自然と身についてしまう。日本の死刑制度がどのようなものか、死刑はどのように執行されるのか。特に生々しい死刑描写は、死刑というものについて考えさせられる。それが本書の趣旨ではないにしろ。
そして、死刑に関わる人には4種類あることを改めて知る。ひとつめは死刑囚当事者、ふたつめは犯罪被害者の遺族、みっつめは刑を執行する刑務官、最後が刑の執行を指示する法務省関係者だ。それぞれが、死刑というものを中心にして、それぞれの置かれた立場で何をどのように考えるか。
それはともかく、肝心のお話は、無実の罪を着せられて死刑判決を受けて7年、執行がいつ行われてもおかしくない死刑囚を救うために働き回る2人の男の物語である。矯正処遇官と仮釈放中の囚人という異色の組み合わせ。果たして彼らに依頼した人物は何者なのか?三ヶ月という期限、そして報酬の金額の意味とは?
謎解きは、とにかく面白いので、読んでみてとしか言えない。ただ、その合間合間に出てくる、家族の話、兄弟の話、同僚の話、などはどれも考えさせられる深いものだ。単なるサスペンスではない、社会派小説を読んでいる気持ちにもなる。だから、人によっては重いと思うかも知れない。けど、少しでも社会派的なものや、死刑制度に興味があれば読んでみることをオススメする。
以降はややネタバレ。
結局、死刑囚は土壇場で無実になる。依頼主の正体もわかる。しかし、その代償は大きい。その代償が、この作品にある種のモヤモヤ感を残すのだが、善人であるべき人物は善である保証はなく、悪人が必ずしも悪ではないということだ。人には時代劇のような一定の属性など存在しない、そんな当たり前のことを改めて考えさせられる。
これから高野作品を読んでいくぞという人には、まずこれを読めとオススメしたい一冊である。
あ、DVDにもなっていたのか。主演は、反町?山崎努は渋いな…。観てみようかな…。