職場で、しゃかりきになって古いものを整理している。すると意外なものが出てきてビックリするのだが、今回出てきたのは版下。版下とは何か?う〜ん、印刷所に渡す(入稿すると言う)原稿のようなものと言えばいいかな?いや、ハンコの素とか?印刷所では、版下をカメラで撮影し、印刷するためのハンコ(製版フィルム)を作るのだ。
やっぱわかりにくいな。現物は、これだ!かれこれ20年ほど前のものか…。
この版下は、どうやら外箱のようだ。このとおりに印刷し、カットすれば、箱に組み上げられる。ああ、巨大な紙だな…。そのとおり。版下は、大きな紙である。というか、印刷したいサイズよりちょっと大きな紙である。これを台紙という。その台紙に、文字や図形の輪郭などを黒で描いていく。基本的に、版下上に乗せるのは黒いものだけである。
モノクロ印刷ならそれでいい。ではカラー印刷の場合、どうやって色を付けるのか?答えは、上に乗っているトレペ(トレーシングペーパー)にある。妙に白く見えるのは、トレペが上に乗っていたからというわけだ。そのトレペに、赤字で色の指定などを行っていくのだ。拡大してみよう。
右の方に「英字色C90+M70」とか書いてあるのが、色の指定。この場合、シアン(Cyan)90%、マジェンタ(Magenta)70%という意味。青と紫を混ぜたような色になる。グラデーションを使いたい場合には、グラデーションと書き、始点と終点の色を同じように指定する。
写真などはどうするのか?写真の場合、アタリといって四角い枠などだけを置いておき、別にポジフィルムなどで写真原稿を指定する。
こんな感じで、えらく手作業な感じだ。文字どおり手作業で、版下を作る人も手作業だが、版下から製版フィルムを起こす作業もほとんど手作業だ。職人の腕が活きると思っていてよい。果たして指定どおりに色が乗るのか確かめなければならないから、色校正(色校)というのが必須であった。
今は版下はないのか?うん、ない。10ン年も前から、製版フィルムを作るのはコンピュータ任せになった。主にAdobe社のソフトを使って、版下に相当するものを画面上で組み上げると、あ〜ら不思議、製版フィルムになって出てくる。
しかし今は製版フィルムも使わないのだ。直接ハンコを作る仕組みであるCTP(ダイレクト刷版)が普通になった。フィルムを介さないのでコストダウンにもなるし、スピードアップにもなる。いいこと尽くめだ。難点は、色の微妙な出方を指定できないことかな。データで作ったとおりになるだけなので、あとは印刷時の温度や湿度、インクや紙の機嫌次第、ということになる。色校正も、よほど発色が気になるとか、そういう事情がない限り取らなくなった。
スマン、技術的にはだいぶ端折った話だったのでよくわからないところもあるかと思う。でも、昔はこんなたいへんなことをやっていたんだよ、ということを知っていただけたら幸いだ。そうそう、電話機だって、今はアドレス帳から呼び出して一発だけど、昔は交換手の女性が繋いでいたのだ。でも何となく、人が介在するものというのは、何となく作業した人の雰囲気とか伝わって来てうれしくなるときがあるね。