11月12付けの日本経済新聞朝刊「アートレビュー」面に約物(やくもの)が取り上げられていました。出版、印刷にかかわる人なら耳か目にしたことがある言葉のはず。簡単に言えば、文字の中でも句読点や括弧などの記号類のことをこう呼びます。
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それにしても、なぜ約物というのだろう?
最近は、約物と言っても言葉を知らないという若い人も増えましたが、私はまだまだ普通に使います。写植を知っている世代の人なら、そんな感じでしょう。「約物の脇は基本、詰めてね。」とか指示を入れますが、ある程度の年齢のオペレーターなら「アイアイサー」で答えてくれます。
わからない人なら、「括弧の脇は空けないでね。」「閉じ括弧と句読点が続いたら詰めてね。」などと具体的に指示します。
面白いのは、約物が使われだしたのは、そんなに昔のことではないということですね。文字は、もともと教養の高い人が使うもので、誰にとっても読みやすくする必要はなかった、というわけです。江戸時代に入り庶民が文学作品を楽しむなど変わってくると、文を区切るなど読みやすさを出すために約物が考えられ出したとか。
明治に入って、欧米の言語に倣って句読点、括弧などが使われるようになってきたそうです。カギ括弧も最初は開きしかなくて、閉じはなかったとか。なんだか、できるだけ約物を使いたくないのかな?とか思ったり、面白いです。
今では、当たり前のように使っている約物ですが、その意味を考えながら使うと、文章のクォリティがアップするかもしれませんね。
余談ですが、写植の時代には、カギ括弧に二種類あるとか、こだわりを感じました。何が違うかというと、“「”の縦の部分の長さの違いです。文学作品なのか、実用書なのか、教科書なのか、などで使い分けるそうです。すごいですね。
最後にまで引っ張りましたが、約物とは、「文章の約束事」からきているそうです。うん、約束事というのは、多くは句読点や括弧絡みだから、あながち間違いではないかもよ。