余計なことはしない、これに尽きる。

天気のよい平日、仕事の関係で蔵前(東京都台東区)まで行った。無事に打ち合わせを終えて、「そうだ!ついでなので秋葉原に寄っていこう!」と思ったまではよかったのだが…。

※えぐい話なので、そういうの苦手という人はこの先に進まないこと。

Gold_fire_01 ※写真と本文はほぼ関係ありません。

打ち合わせ先の人に聞くと、秋葉原に出るには総武線の浅草橋まで歩き、そこから一駅乗るのがもっとも速くわかりやすいという。駅までは、10分ほどだという。それくらいなら歩くのにはまったく問題なしと思い、健康のためにもさっそく歩くことにした。打ち合わせ先の人に別れを告げて歩き出すと、そこはなかなか面白い通りなのであった。そう、おもちゃ問屋街である。

今でもどこでも見かける新しいおもちゃ、すっかり見かけなくなったような珍しいおもちゃなどを眺め、「素人さんお断り」「小売りいたしません」などという張り紙に、「何を~、こしゃくな!」とか勝手に思いつつ、しばらく歩いたのであった。それにしても、古い木造の店舗など、実に味がある。幼少時に通った駄菓子屋を彷彿とさせるそのたたずまいに、いつもの病気が出た。「そうだ、写真を撮っておこう。」と来た道を引き返した。これがすべての間違いのもとだった。

お目当てのお店の前で、携帯電話のカメラでパチリ。ちょうどよいアングルだとどうしても歩道からちょっとはみ出ざるを得ない(このへんがすでに病気)。撮影後、すばやく戻ろうとしたら何かに蹴躓いた気配。と思ったときにはすでに遅く、路上に這っていたのであった。どうやら、横断歩道にはみ出ていた縁石に蹴躓いたらしい。何でここにこんなものがと思いつつ、転び慣れていない体は、手を突き、膝を突き、携帯をかばったのか手のひらでなく手の甲を突くなど悲惨で、スーツのパンツも破れてしまった。冷静を装いつつ被害状況を確認すると、パンツの両足に破損、両手に数カ所の裂傷。出血やや多し。これは困った、とにかくパンツだけはどうにかせねばなるまい、と地元の人らしいおばあさんなどに紳士服店などがあるか聞いても、「このへんにはそんな店はないよ。」と言われる始末。これは困った。

服も困ったが、何より出血がひどいのだ。思ったより深くえぐったようだ。アスファルトというのは、平坦なようで意外な凶器である。転んだだけでこれなら、車にはねられたときなどのダメージは想像しがたい。などということを考えつつ、しばらく道を歩くと薬局がある。そうだ、ここでとりあえず絆創膏などを手当てしよう、と思い、中に入る。入り口近くにいた女性の店員に主旨を告げると、どういうわけか奥から年配の薬剤師さん(失礼ながら、いかにも下町のおじさんという感じだ)を呼び出すのであった。いえ、絆創膏などを買うだけでいいのです、と告げると、それほど外観が異様だったのだ、まぁ、とにかく落ち着いて座れ、いいから座れと椅子に座らされる。

「傷にはあまり貼らねぇ方がいいんだよ、消毒だけでいいよ。」「いえ、血が出てると服に付いたり、人に迷惑がかかるかも知れませんし。」「まずは消毒だ。」とマキロンをしみこませたパッドを次々渡される。手の傷(5カ所)はそれでひととおり拭いたのであった。そうだ、足はどうなっている?と思ってみると、あちゃ~両足ともひどい状態だ。まさか肉がえぐれている?とまで思ったが、出血だけのようだ。そこも拭いて一段落、あとは手には絆創膏、足には大きめのパッドを当ててもらい、テープで固定した。

これでひととおり済んだので、薬剤師さんに丁重にお礼を述べる。そうだ、と思い近くにパンツの買えるような店はないかと聞くと、浅草か御徒町まで行かないと、そういうのはないと言う(土地勘のない人のために言うと、いずれも蔵前から近いが、歩いていくには遠いと言うところである)。具体的には、浅草の松坂屋にユニクロが入っているという。話を聞きながら、使用した薬品などの精算をしてもらう。けっこうかかったが、仕方あるまい。帰りがけに、そこのバス停から乗って、どこで降りて、と詳しく説明してくれる。ありがたい。これが下町かと感じつつ、ここは言われた通りにしてみようとバス停まで歩き、バスを待つ。バス停には誰もいない。実は、この間も、大きなバッグで破けた箇所をかばいつつ歩いていたので、周囲から見れば相当不審だっただろう。

幸い、バスはすぐに来た。行き先を確認し、乗る。何だか皆に見られているようで気恥ずかしい。あとから思えば、不審な人間が乗ってきたと言うことで、「すわ、バスジャック!?」とまで思われていたらイヤだなぁ、とかスマンなぁ、と思った。すぐに浅草駅前に着いたので降車したら、目の前が松坂屋なのであった。すぐに入って、やはり挙動不審なままエレベータに乗って、ユニクロに入る。まぁ、チノパンと適当なジャケットを買えばいいだろうと言うことで、物色する。そういえば、新しくパンツとジャケットを買おうと思っていたので、これは好都合と脳天気なことを思いつつ、品定めをするのであった。

状況が状況なので、試着などははばかられる。自分のサイズを覚えていてよかったと思う。幸い、少し前にジーンズを新調したので、そのサイズが使えるはずだ。もしも血が漏れても目立たないように、黒のパンツを選ぶ。あと、ジャケットだがこれは意外と品揃えがなく(店の方向性上、しようがない)、黒のコーデュロイを選ぶ。あとは購入するだけだ。しめて1万円。安いのか、これは?(家で聞けば、十分に安いと言われた)。

すぐに着たいので、タグ類はとってくれるように、会計の人に依頼する。会計完了。そのまま、試着ルームで着替えさせてもらう。上着は何ともないが、パンツの方はひどい。裏側にもかなりの血が付いている。これは思いの外ひどいなとのんきに思いつつ、履き替える。上着も着て、ポケットの中身などをすべて移し、スーツはそのままユニクロの袋に入れて準備完了。なかなかよいじゃないかと自画自賛しつつ、試着ルームを出て、店を出る。そうだ、ここで勤務先に連絡を入れておかなければ。「トラブル発生のため帰社が遅延。」って、どういうトラブルだよと言う突っ込みが来るのは承知の上だ。

帰社すれば、笑いのよいネタにされるし、家に帰れば年寄りが無茶するな(何言ってやがる)とか、おおかた変なものを見ていて転んだんでしょ(ぎくっ)といった暴言を浴びつつ、まぁとにかく落ち着いたと言うことで休んだのであった。こりゃしばらくはジム通いも無理だなと、やはり懲りないことを考えつつ、これ幸いにこの土日はぐーたらしようかとか、やはり脳みそがお花畑な感じなのであった。

しかし、久しぶりの怪我で、大きな教訓を得た。「余計なことはしない。」これに尽きる。あそこで引き返さなければ、そのまま秋葉原に行き、適当に買い物をして、予定どおり帰社したであろう。物笑いの種にもならずに、愛情のかけらもない罵詈雑言を浴びることもなかっただろうと思い、ただやはりまた繰り返すのだろうな、それが私なのだと自分を慰めてこの話は終わるのであった。

それにしても長いね。いつ書いているの?という感じだ。

コメント

  1. ぴろろ より:

    この記事はいつのことなのでしょう?お怪我の具合はいかがですか?痛みだけでも引けば、気にならなくなると思うのですが…。大きな痕が残らないといいですね。
    お写真から、勝手に浅草の話かと思いましたら、意外なお話になっていき、ビックリしました。文章がお上手なので、怪我の状態、周囲の人の目、その時の心境が手に取るように伝わってきました。転んだ瞬間、ちょっと気恥ずかしい気持ちになりますよね。同行者がいればまだしも、一人だと痛がることもできず…。
    いいお買い物ができたと思って、嫌なことは忘れましょう。
    それにしても、薬局ではちょっとした手当てまでしてくれるのですね。病院に行くほどではない時は、助かりますね。

  2. なおさん より:

    ぴろろさん、
    お気遣いありがとうございます。
    この記事は、この日付そのままで、11/13のことです。もしかして金曜?とか思ったら、しっかり木曜でしたね。
    それにしても、連れがいないとき、周囲が無反応だと本当に困ります、いろんな意味で。自分がどう振る舞ったらいいのか、悩みますよね。決して、皆でかまってくれということを言いたいのではありませんが…。
    薬局の対応も、土地柄と思います。下町とやたら書いているのもそのせいで…。別の場所なら、薬売って、それで終わりでも不思議でないですよ。
    面倒くさい人は、ここで救急車呼んでしまうのでしょうね。

  3. 野の花 より:

    びっくりしました。お気の毒様でした。
    でも、ユーモラスな感じが漂って、まだちょっとだけ余裕が感じられて良かったです。またまた私事になりますが、思い出して可笑しくなったことがあります。私も7年前に縁石につまづいたのです。私の場合はお花に見とれて歩いていたのです(野の花らしいかな?)。そしたら縁石・・・必然的につんのめって、私はその時、足の指の付け根あたりで「バキッ!」と言う音がするのを聞きました。そして立つ事も出来ない痛みが襲い、たまたまその現場を目撃していたスーパーの店員さんや店長さんに助けられ、店長さんが病院まで運んでくれました。そしてレントゲン写真は非情にも
    足の指の付け根の骨が4本も同時に骨折したことを教えてくれました。完治まで長くかかりました。それに比べたらなおさんはずっとましですよ。まだまだ上には上がいます。その縁石に感謝しなければ・・・(笑)。それにしても「余計なことはしない」にはとても共感します。

  4. なおさん より:

    野の花さん、
    いろんな経験をされていますね(笑)。
    でも骨折とは災難な、親切な人たちがたくさんいてよかったです。私など…(泣)。
    昨日も、駅で電車を待っていたら、目の前に面白い看板があったので撮影したら、直後に目の前を通過の特急が猛スピードで通過していきました。
    まったく気が付かなかったから、いつか死ぬんじゃないかと思います。

  5. kana より:

    この記事、大人気ですねw
    この手の話、好きだなぁ。
    冷静に書いてはいるけれど、
    そのときは痛みすら気づかないくらいに、
    強烈に恥ずかしかったでしょうねぇ・・
    なにはともあれ、早く治るとよいですね。
    しかし、
    余計なことをしない生き方なんて、つまらない。
    道草こそ、人生の醍醐味と申せましょう・・・?(笑)

  6. なおさん より:

    kanaさん、
    この手の話はお好きですか?私は好きですね。
    そう、大人が転ぶって、想定外だから、すごく恥ずかしいのですね、書いてないですけど。
    いっそ、皆が何か言ってくれたりすればいいのに、無視されていたりするとなおさらで。
    > 余計なことをしない生き方なんて、つまらない。
    > 道草こそ、人生の醍醐味と申せましょう・・・?(笑)
    それにも賛同しますね。おかげさまで、この記事が書けているわけですし(得なのか損なのか…)。

  7. 野の花 より:

    とてもおもしろかったので(失礼!)また読ませていただきました。そしたらお写真に気になるものが・・・。あの写真中央の金色に光る、限りなく○○○に似たモニュメント・・・。何を表現しようとしているのでしょうね。私なら間違いなく、その物体に目を奪われて転んでしまうでしょう(笑)。

  8. なおさん より:

    野の花さん、
    あれに目はいくとはお目が高い!
    できた当時は、騒然としました(今ではふつう)。
    アサヒビールの本社にある、金色の炎を表したオブジェです。
    フランス人のデザイナーが、アサヒビール社員の燃えるような心を表現したとか。
    本来は立っているべきものらしいのですが、それだと高すぎるので寝かせたそうです。
    高速道路を走っていてもよく見えるので、本当に事故を起こしそうです。

  9. 野の花 より:

    そうだったのですね。本来立っているべきものを寝かせたら・・・色と言い形と言い、○○○にしか見えません(笑)。おもしろいですね!本当にこのオブジェのために事故が起こらないことを祈ります。