技術者のためのリーダーシップ論「スーパーエンジニアへの道」―G. M. ワインバーグ

また古い本を持ち出してきました。ジェラルド・M・ワインバーグの「スーパーエンジニアへの道」です。1991年発刊、私はこれを20年ほど前に読んでいるわけですが、当時はまだいきがっていた20代、いちおうマネジメント職には就いていましたが、内容的にはいまいちピンと来なかったのを覚えています。

スーパーエンジニアへの道―技術リーダーシップの人間学 共立出版。

内容は、キーボードを叩きプログラムをばんばんこなしていく段階から、リーダーとして組織をまとめて問題解決をするという段階へ移行するような人に向けてのマネジメント論、リーダーシップ論になっています。こう書くとピンと来ないでしょうが、単純に言えば現場から管理職へ進む際に読んで置きたい本、ということになります。

なぜにこんな本を今頃引っ張り出そうと思ったのか?これは身近で最近起きていることになるのですが、「物事をうまく進められる人」と「物事をうまく進められない人」の違いって一体何だろう、といった問題提起にあります。

同じことをさせても、片方がうまくいき、もう一方はうまくいかない、この本質的な謎を解けば、歩留まりの悪さを解決できるかも知れない、と思うわけです。こういったときに、この本の内容は非常に役立つのではないかと思いました。

ここでだらだらと本の内容を書いていてもしようがないですから、書籍中で印象に残るエピソードをいくつか。

あるアメリカの州では、車のナンバープレートに記載する語を自由に決められるのですが、当局は卑猥な語など不適切なものは登録時に排除しようとしました。そこで呼ばれたのがIBMの技術者ですが、彼は要求を聞くなり、そんなことはまったく問題ない、と言い放ったそうです。突っ込むと、不適切な語を集めたデータベースを作り、それに照会することで排除は可能、ということだそうです。

では、そのようなデータベースはどこにあるのか?ない場合にはどうやって作るのか?聞かれても、その技術者は「問題ない」と繰り返すばかり。著者は、これをNPS(Non Problem Syndrome、問題ない症候群)と名付けて、憐憫の情で彼を見つめたそうです。これは、問題を問題として認識したくない、という心の表れではないかと思います。

もうひとつ。ダイエットに執心している女友だちから相談を受けます。聞けば、食べていないのにダイエットの効果が出ないということ。そこで、その友人の行動をチェックすることにしました。その友人には小さいお子さんがいますが、お子さんがアイスクリームを食べるときに、こぼすと大変だからと、あらかじめ食べて量を減らしてあげているのです。

また、レストランでも、自分はダイエット中だからと注文しません。ですが、周囲の注文したものを味見と称して少しずつもらっているのです。あとでそのことを指摘しても、本人にはまったく意識がないのです。だから、食べていないのにダイエットできない、という話になるのです。これは、問題をそもそも意識しない(問題だから意識したくない)ということになるのでしょう。

何か問題がある場合には、本人が問題を問題として認めたくない、ということは多々あります。だから、何を聞いても「大丈夫」「問題ない」としか答えないし、それを前提とした行動パターンとなります。だから、うまくいかないのです。だって、問題はあるのですから。

このような本は、ある程度年をとってから読むと、腑に落ちるという部分があるかと思います。そういう意味では、私などが今読みたいのですが、残念ながら若手にあげてしまいました。こういうとき、電子出版で少し安く手に入ればいいなぁ、とか思うのです。脱線ですが。

コメント

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