北海道からはるばるやってきた人に、おみやげで「六花亭」の「マルセイバターサンド」をいただいた。だがこともあろうに、いただいたことを覚えてはいたが皆に配らなきゃ配らなきゃと思いつつ、ある日包装をじっくり見れば、「賞味期限が切れている…。」さらにじっくり見れば、「一週間も過ぎている…。」注意書きを見れば「直射日光を避けて25度以下の場所で保存」と書かれている。オフィスのデスク下に置いておいたので、この条件は満たされている。とすると、経験上1週間ほどは大丈夫か?というわけで、周囲の同意も得つつ、自己責任で皆に食べてもらったら、だが、これがうまいらしい。実は卑怯なことに、本人はまだ食べていないのだ。どうも、洋風のものは苦手だ。
実はこのお菓子、もらってから2週間ほどなので、1週間で賞味期限を迎えたことになる。バターサンドなので、クッキーの間にレーズンやラム酒などを混ぜ込んだバターが挟み込んである。バターは生鮮食品だから、賞味期限がシビアなのであろう。ということで、バターに限らず生菓子系は賞味期限が短いのが当たり前と言うことに改めて気付いた。近くの和菓子屋では、せいぜい2, 3日の賞味期間しか想定していない。生洋菓子なら、当日か翌日だ。
こういった、割と賞味期間にシビアなはずのお菓子を、表示を偽って販売したり、回収したものを賞味期限を改めて再出荷したりとした老舗の所行が明るみに出た。私も、ここのお菓子は関西に出たときに買ってきたりと好きなものだったのだが、購入したのは新幹線の駅なので「日持ちのする」仕様のものが売られていた可能性は非常に高い。高いというか、多分そうだったに違いないような気がする。きっと、駅の売店、高速道路のSA内の売店などでは、どちらかというと「レベルの低い」ものが売られているような気がする。
こういった所行はとんでもないことで、あの経営者の答弁も噴飯ものだが、これまでさんざん食品関連企業の不祥事が騒がれた中で、なぜそれを見ながら自らの襟を正すという行為に改めないのかは、不思議である。明日は我が身、他山の石、そういった発想があれば少しはましな方に進んだろうに、これはやはり「身内の常識」に捕らわれて世間の常識とは乖離してしまった意識にあるのだろうか。
食べ物が絡んだ商売をする以上、お客にまっとうなものを出すのは当然のことと思われるが、我々も考えなくてはならないことはないことがあるまい。いつでもどこでもきちんとしたものを必ず欲しいなどと望めば、それに合わせて無理をしてくるところが必ず出てくる。無理をしないまでも、手のかかる部分を省いてまがい物を出してしまえとか考えるところは必ず出てくる。土地のものは土地のもので、そこに出向かなければ手に入らないとか、数が出てしまえばあとは逆立ちしてもひっくり返っても出てこないといった状況を素直に受け入れることのできる精神土壌も必要なのかと感じる。
それにしても、こういったことは内部告発で明るみに出ることが多くなってきた。これは、コンプライアンス(法令遵守)意識の高まりや告発者の保護体制が整ってきたことも理由に挙げられるが、大きいのは企業対従業員の関係の変化だろう。従来、終身雇用の下で企業と従業員は家族同然の関係を築いてきた。家庭は壊したくないので、家庭内の秘密はおおっぴらにしない、運命共同体、共犯者といった意識が支配している部分があった。だが労働の流動性が確保された現在では従業員が必要以上に企業に忠誠心を持つことは少なくなってきているし、企業はとっくに終身雇用を成果主義の名の下に捨て去っている。関係が希薄になれば、反旗を翻すものが出てきても不思議ではない。こういった変化に気付かない企業が、未来永劫続けられるかと思っていた所行を明るみに出され、一瞬で消え去ってしまうのだろう。
かわいそうなのは、生み出された製品と、その材料たちである。値上がりしている、高い、少ないと不満を言う前に、今ある食べ物を大事にしたいものだ。
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