ニホンが高度成長期に入る頃の、昭和40年代の作品である。水木先生の作品には、文明社会へのアンチテーゼというか、原始社会への憧れというか、そういったものが基本にあると思うのだが、それが貫かれている。タイトルは、出版社、編集者が勝手に付けたものだろうから、必ずしも体を表していない。基本的には、風刺の若干効いた、ちょっとお色気もある短編集である。
水木しげるのニッポン幸福哀歌(エレジー) (角川文庫)
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水木 しげる
角川書店
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「人間が本当に生きているのは現在だけだ」(サラリーマン山田)
個人的に好きな作品は、「一つ目小僧」(目の数で、見えるものが違う―過去、現在、未来)、「猫の街」(旦那が皆猫になってしまう)、「影女」(何とも愛すべき妖怪である)、「雨女」(雨の日にしか逢えぬ女、その正体は)、「梅干し」(種には観音様がいる)、などだろうか?初めて文庫化された作品も多く、初めて目にするというお話も多い。
この短編が連載されていたのは、創刊間もない「漫画アクション」ということだが、何話かに出てくる異様に目鼻立ちの整った女性の出演が気になる。果たしてこれは水木先生の手によるものなのだろうか?絵は達者な方と思われるので、描こうと思えばどんなタッチの絵も思いのままなのかも知れないが、気になるのである。そういえば、TVアニメになった「ゲゲゲの鬼太郎」に夢子ちゃんなる美少女が登場し、鬼太郎と妙に親しくなって猫娘の嫉妬を買っていたが、それとは何の関係もないのだろうか、と思う次第である。
コメント
水木しげるさん、こちらの出身の方なのでとても親しみを感じます。そして、私も水木哲学に共感します。夢子ちゃんや目鼻立ちの整った女性の謎・・・。水木さんはとてもいたずら好きな人みたいです。何かからくりがあるのかもしれませんね(笑)。娘さんの書かれた本を読むと
水木さんの人間性、人柄が手に取るように伝わって来ます。東京で長らく暮らしていても、山陰の人であり続けていてくださるのもうれしいことです。
野の花さん、
最近、水木先生の作品がどんどん文庫化されて、うれしいやら悲しいやら、ですね。
原点は、子供時代のこと、戦争に駆り出されたときのこと、そこにあるようです。必然的に、その時代のことの作品が多い。でもまぁ、同じような時代を過ごした人がたくさんいても、水木先生のようにはならなかったのですから、やっぱり先生は特別なのでしょう。