最近、日本の近代史に興味があって、ふと見かけて購入したのがこの2冊です。半藤一利氏による講義形式のお話が単行本になり、その後文庫化されたものです。
歴史は繰り返す。
この本を読んだ一番の感想です。そして、
基本的に人間の本質は変わらない。
ですね。この本の上巻(太平洋戦争終結まで)を読むと、まさにそう思います。責任感が薄く場当たり的な政府、世論を煽動するマスコミ、流されやすい国民性、まさに今と同じです。
必死に列強諸国に並ぼう、対等の関係になるように国を強くしようと一生懸命だった明治の時代から、日清、日露の戦争に勝ち、国際的にも一流国と認められるようになり、国も豊かになって安定すると、暇を持てあますのか、今後の方向性をどうしようか悩むのか、迷走を始めます。
そう、必死に駆け上がろうとしているときは、皆が同じ方を向いているのでよいのですが、上がってしまうと今度はどこに行こうかということになり、迷走する。あっちだ、こっちだといっているうちにおかしなことになり、かつては戦争に励むというようなことになってしまったわけです。
戦後も、必死に経済を復興して、国を豊かにしようと皆が一生懸命で同じ方向を向いているうちはよかったのですが、国力がもうこれ以上ないところまで向上し、経済大国なんて言われていい気になっていたら、バブルがはじけて迷走を始めたわけです。
それはそれとして、今の教育では、日本の近代史をきちんと教えていませんし、知ること自体が何だか後ろめたいなんて風潮がありますから、非常に漠然と「日本は戦争を仕掛けてアジア諸国に酷いことをした。だから責められて当然なんだ」などと、当事者でもないのに思っているわけです。
ですが、世の中にはたくさんの国家があって、たくさんの政治家、軍人、そして国民がいて動いているわけですから、そんな単純な話では済まないわけです。もちろん、善悪を単純に白黒付けて論じることなんてできません。ある局面では善でも、別の局面では悪とか、そういったことは当然なわけです(そもそも善悪の定義自体、あってないようなものです)。
本当の偶然であらぬ方向に動いてしまったとか、ああ痛恨の勘違いとか、そんなこともあって今があるわけです。そういったことを踏まえて歴史を学ばないとまずいんじゃないか、とも思うわけです。
この本は、戦前生まれで戦争を体験し、そしてその後も研究を続けてきた著者の大作です。もちろん、これがすべて正しくて、あらゆる面で中立である、とは言えないでしょう。ですが、こういったことがあった、そしてこういう見方がある、ということは知っておいて損はないと思うのです。
双方合わせて1,000ページを軽く超えて、非常に読み応えがある本ですが、読んでおくと日本の近代史に関する見方が多少は変わるのではないでしょうか。お勧めしたいと思います。
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