女子高生2人が主人公という、一風変わったコミック。女子高生が主人公というと、ありふれた学園ホラーやそんなのを予想するかも知れないが、そこは諸星大二郎のこと、かなり変わった世界を醸し出している。
主人公の栞(しおり)、紙魚子(しみこ)が住む胃の頭町(これは井の頭のパロディでしょうな)を舞台に、さまざまなストーリーが展開される。さまざまとはいえ、設定が普通でない。神経が何本か抜けているような、いい意味で肝の太い栞(見た目は美形の女子高生である)、そっち方面の古本ばかりを扱う古本屋の娘である紙魚子(眼鏡をかけており知的な感じ)が、ほとんど毎日何らかの事件に巻き込まれるといった話。
- 栞が生首を拾ってきて飼う。拾ってきた理由が目撃者なら一瞬だが、それじゃつまらないので持って来ちゃったという。ほんまかいな?
- 自殺志望の同級生を自殺館に連れて行く。自殺済みの店主に薬物入りカレーを食べさせられ危うく自殺させられそうになる主人公。
- 花の咲かない桜の巨木に花見にやってくる主人公と友人。そこは大量の死体が埋まっていて武士が100年に一度花見に出てくる名所だった。
- あるはずのないケーキ屋。そこは地獄からやってくるタンクローリーを退治するために、死んでも店を開いている親子がいるのであった。
とまぁ、こんな感じなのである。設定が普通でないのだが、驚きながらもひょうひょうとやりこなす二人の肝っ玉に脱帽である。同級生の特撮マニアの誤変換の話もおかしい。しかし、このシリーズの最大の目玉は、クトールー(ナヌ?)なる女の子のいる、作家段氏の家庭である。奥さんは、顔が部屋ほどもある、おそらくは魔界の人と思われる。最後まで名前はわからないのであった。しかも、ヨグなるペット…。わかる人にはわかる、クトールー伝説…。烏賊のような頭をした異形の者であるクトールー、その敵?ヨグ・ソトト(だったか?)から名前を拝借しているのは間違いないが。
段氏はおそらく普通の人類であり、作家である。それが魔界の住人と思われる奥さんと結婚し、子供まで設けている。この設定だけでもなんなのだが、部分的に現れる奥さんの体の一部分を総合すると、とんでもないことになる。この一家、続く2巻、3巻でも非常に重要なポジションを占めているのだ。
この1巻では、独立したストーリーを個別に楽しむことがメインになるが、段家が登場してからはすべてのストーリーにつながりが出てくるようになる。2巻以降で登場する異色のキャラクタは、段婦人やクトールーちゃんに劣らず刺激的だ。
まずは読んでみるべし。
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