ユビキタスで指切ったッス~。

唐突だが、「ユビキタス」である。よく聞く「ユビキタス」という言葉だが、ラテン語で「偏在する」「いつでもそこにある」というような意味の形容詞ubiquitが語源である。というかそのままだが。ちなみにざくっと言えば、コンピュータ社会における「ユビキタス」とは、いつでもどこでも情報ネットワークに接続し、その機能やサービスを利用できる状態を指すそうだ。何だかわかりにくいが、携帯電話、PCの無線LAN、高速道路のETCなども、ある種のユビキタスである。

ユビキタス社会は便利に違いない。だが、その便利さを認めて積極的に導入するようになるには、どんな動機が必要なのだろうか?

ユビキタス社会では、たとえば人や物などに、個体を認識できる無線ICタグや非接触型のICチップを搭載し、たとえばドアに近づいただけで個人を認証し、OKなら解錠するといった動作が可能になると言う。また、冷蔵庫や電子レンジ、風呂釜などにインターネットに接続可能なネットワークインタフェースを内蔵させ、外出先から携帯電話で冷蔵庫の中のものをチェックしたり、風呂釜のスイッチを入れたり温度調整したりすることが可能になるという。もちろん、冷蔵庫の中のものもひとつひとつが個体として認識され、何があるのかわかるばかりか消費期限などの情報もわかるのである。

日本では、携帯電話や無線LANなどわかりやすい部分が突出して、本来のユビキタスのビジョンが薄れているように感じられるが、何事もわかりやすい部分がなくては一般に普及するわけもなく、この方向性はある意味正解といえる。冷蔵庫云々の話は、たとえばそれを利用するであろう利用者層に対して、便利そうではあるが面倒そうな部分しかイメージできないと思われる。

ユビキタス社会が来るべきものであれば、それはあらゆる人が便利だと思うものでなくてはならない。だが現状では、すごいでしょう?便利でしょう?というアピールばかりが先行しているような気がする。何かやり方を変えるときには、それがすごく便利か、得だと思わせないと原動力にならないのではないかな?と思うのである。冷蔵庫や電子レンジがネットにつながると言って、果たしてどういうメリットを受けられるのか、ぱっと思いつく人はある意味偉いかも知れない。

ユビキタスとは直接の関係はないばかりか東京ローカルな話で申し訳ないのだが、「パスネット」というものがあり、JRを除くほとんどの鉄道会社で使うことができる。これが出始めたときには、定期券に替えてこれを使う人はあまりいなかった。切符を買うことなしに、乗り換えも含めて二地点を任意に移動できるというのはメリットだが、それだけ?という声もあったのは(自分も含めて)確かだ。一種のプリペイドカードなのだが、まったく値引きがないのである。鉄道会社にとってみれば、購入した人が実際に利用しようがしまいが売り上げが立つのだが、それは購入者には還元されない。回数券でさえ実質上の割引があるのだし、今はなくなってしまった「ハイカ」(=ハイウェイカード)も割引があったのである。

非常に不思議な「パスネット」だが、個人的にはシステム投資の回収と、割引を適用する際の会社間での負担などの仕組みがうまく確立できないのではないかと思っている。だがそれにしても利用者が増えてきたのは、精算に便利(裏面にプリントされる)、急いでいるときに便利(切符を買わないで済む)、万が一の保険用(現金がなくても電車に乗れる)、利用可能会社が増えてきた(以前は使えない駅や路線があった)、2枚差しができる(半端な残金を引き継げる)ことによるものだろう。反面、JRでは使えない(たとえば常磐線松戸→千代田線大手町では、ストレートに使えない)といった問題は、JRとの相互乗り入れをしている私鉄が多い東京では、相変わらずのハンディである。だが将来的には、私鉄、JR、バスなどで共通で利用できるように、システムの開発が進んでいるそうである。

携帯電話に非接触型ICチップが内蔵され(ICチップどころかLSIチップがそもそも入っているのだが)、お財布ケータイといってFelicaのように使えるようになっている。私の使っているSH901iSもこのように使えるはず(使ってないが)。将来的には、Suicaのように使えるらしい。実はこのへんが、こういった機能を使う、使わないのボーダーラインではないかと思える。単なる財布の替わりでは、盗難や紛失といったセキュリティ面での不安に対するアドバンテージが今ひとつわかりにくい。だが、ここにSuicaの機能が入れば、JR路線の利用もできるようになるし、乗車券の購入なども便利に行えるようになる。ただ、私鉄線との相互利用ができないのは、Suicaであるからしようがない。

ETCもそうだ。鳴り物入りで登場したETCは、非常に便利なものではあるが、端末料金の高さ、利用料金がかかること、通行料が安くなるわけではないことから、最初は一部の物好きというかええカッコしたがりのドライバーのためといった感じだったが、端末料金が下がり、ETCカードの年会費がかからなくなり、夜間や特定区間の割引が大きくなってきたことで導入が一気に加速した。カーナビに連動させれば、通行記録がカーナビに残るのもいい(残っては困るという人もいるかもしれないが…)。

最近は公共料金やクレジットカード明細の確認をオンラインで済ませ、請求書や明細書の郵送を拒否できるようになっている。こういった方法が可能なら、そちらを選択することにしているが、単に「邪魔な郵便物がなくなる」だけならこんなものをわざわざ申し込んだりしないはずだ。オンラインでの請求/明細処理を申し込むことで、料金が多少だが割引になるケースがある(NTTドコモ、UCカードなど)。ついでの効果で、紙資源の節約にもなっていると思えば、そっちに変えてしまおうという気にもなるかもしれない。

話はだいぶ逸れてしまったが、提供する側がすごい、素晴らしい、便利、などを連発しても周囲はなかなか乗ってこないものだなぁ、と思う。何か強力な動機があれば、あっというまに一般化し、大衆化してしまうのは、ビデオデッキ、インターネットなどを見れば明らかなのであるが…。ちなみに個人的にはユビキタスのビジョンは否定していない。要は、楽に、便利に、楽しくし、得させてくれよ、と言うことなのだろうか。わがままだなぁ。

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