究極超人あ~る―ゆうきまさみ

これはもう、マニアックなコミックである。「パトレイバー」で有名なゆうきまさみの出世作と言えようか。「R・田中一郎」と称するロボット、いや違った、アンドロイドが中心になって繰り広げる学園コメディである。原作は、もう20年以上ほど前になるのか。しばらくしてコミックスで読んだ覚えもあるが、ふとしたことでまた読んでみたくなり、文庫を買い求めた。何だか懐かしいギャグというかパロディの連続だが、さすがに古いかなぁ、とか思ったが。

究極超人あ~る (1) (小学館文庫)

この作品の舞台は春風高校という学校、登場人物の中心は「光画部」なるクラブに属する。光画部とは、いわゆる写真部で、要するに写真を趣味とする面々の話かと思いきや、実はそうではない。なぜに写真部にロボット?という設定もすごいが、登場人物もアクが強いというか、個性的な面々ばかりである。もしかしたら普通の人なんかはモブシーン以外には出てこないのでは?と思うくらい個人的なのである。

まず春風高校の校長は、落語家(のよう)である。入学式で、いきなり芸をぶちかまして新入生の度肝を抜く。しかも光画部のOBであり、用務員(これも古い呼び方だな)さんもOBなのだ。そう、OB連がメチャクチャなのだ。最初は人として出てきたが、そのうち仮装した状態でしか出てこなくなったのだ。最後まで人の形をしていたのは、「たわば先輩」と呼ばれる謎の専門学校生、校長先生、用務員さんである。この用務員は、「死神博士」くさいのだが…。

光画部の面々、なんと言っても「鳥坂先輩」であろう。今ではひんしゅくものな中指を立てるポーズ、何事にも勝負を挑み、しかも結構強いらしい。頭が大きいらしいが、今では流行らない長髪に「だらう」「でせう」などの謎の言い回しといい、最後までかき回してくれる。「さんご」「しいちゃん」と呼ばれる女の子も、普通のようで普通でない。名前がほとんど出ないメガネと細目の彼も、普通なようで普通でない。

私は、こういった学園ものが好きなのである。私の高校時代とオーバーラップするのか、はちゃめちゃな文化系クラブ、という設定に惹かれるのだ。このほかには、かわあきらの「いらかの波」も好きだ。こちらは、建築部という設定だが、案の定はちゃめちゃだ。「あ~る」には恋愛要素はほとんどないが、「いらか」は少女コミックらしく、恋愛要素はきちんとある。ちなみに私は「物理部」というコンピュータやアマチュア無線を趣味とするクラブの部長であった。部室(=物理教室)で野球をやり、近くの公園で野球をやり、アマチュア無線大会があれば学校に泊まり込み、富士登山も行い、何でもやるのであった。だからこそ、シンパシーを感じるのかもしれない。

このお話が好きなのは、カメラや写真、鉄道など、実にマニアックなネタが出てくるからだ。東北の冬山に行き、列車の写真を撮ろうとして「トクユキ」(特殊除雪車)に遭遇するとか、ニコンのカメラF1やF3のうんちくを出したり、ダイオードを鼻から出し入れするなとか、知らなければ面白くもないネタばかりだ。だがわかれば十分に楽しめる、そんなネタに溢れている。

最後の方は、残念ながらあまり盛り上がりに欠ける話になっているのが寂しい感じだ。でも全体的に十分楽しめる。何だか楽しい学園もの、という設定ならお勧めだ。だが、重ねていうが相当マニアックである…。

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