イニシアチブをとれ!

これはもっと早く書きたかったことなのですが…。

最近思うことなのですが、国レベルで起きていることが、実に微妙な塩梅で身近でもほぼ相似形で起きているなあと。こういう意味では、世界の大きさの差こそあれ、中心にいるのは人間で、そこには大小の差はないのだな、とつくづく思います。

これは仕事場で起きていたお話です(当人が読んでもわからないように相当抽象化しています。一部フィクションも。笑)。

私のところのあるメンバーA君が、ある取引先Bさんと仕事をしていました。通常、取引条件については契約文書を交わすのですが、そのときに限って条件の数字を倍近く間違えてしまったんですね。お金はこちらから出ていくものなので、倍も違っていたらたいへんです。A君は直ちに修正をBさんに申し入れましたが、一度交わしたものだからと聴く耳を持ちません。Bさんとはこれまで何度となく仕事をしてきましたので、何の話もなく条件が変わっていたら不思議に思いそうなものですが、知っていて黙っていたようです。

文書の作成と確認においては、完全にこちらのミスです。ですが、そもそもイレギュラーな条件であり、あり得ない条件(つまりこちらが持ち出しになるような)なので、何とかもとの条件に戻そうと、そのA君は上司のC君とともに何度も交渉しました。ところが、交渉を続けるうちに、Bさんの要求がどんどんエスカレートしていくんですね。なぜエスカレートするのだろうと思いましたら、どうやらA君の交渉方法に問題があったらしいのです。

これは、何も材料も持たずに、お願いするだけの交渉をしていた、ということなのです。今回はこちらのミスでした、なんとかお願いします、といった感じですね。この背景には、A君自身の実績のために今回の仕事について納期を遅らすわけにはいかないから、スケジュールは守ってもらわなければならない、という意識があったようです。その足元を見られたということなのでしょう。この件が片付かないと納品しないとBさんが言い出しました。

条件がクリアにされない以上、納品しない。これはある意味正しい対応です。そのため、A君は、今回の条件をとりあえず飲むようなことを考え始めたようです。それは、さらに別件を、このあとさらにお願いすることになっていたからというのもあるのです。するとBさんは、以降の案件も今回の条件(つまりミスで生じたもの)にしろと言い出しました。今後の案件も俺を頼りにしないとダメなはず、というBさんの自信があったようです。

挙げ句の果てに、なぜトップが詫びに来ない、C君など寄越しては俺をバカにしているのか、とまでBさんが言い始めました。つまり、条件を間違えたのはそっちで、俺は不愉快な思いをしたから、(ここがポイント)条件は譲らないが詫びを入れろという論理です。このあたりは、判断が分かれるところと思いますが、私には無茶な論理と思えます。

この間の話をずっとA君とC君から聞いていた私は、さすがに堪忍袋の緒が切れました。今回のミスはこちら発なので飲むことにする。だが以降の案件は白紙だ!詫びもしない!そこまでA君にBさんへ言わせました。この時点で、今後の案件は別の人に振る、といったことをすでに腹に決めていましたし、当てもありました。

そのとき、Bさんは「後悔するぞ!」みたいなことを叫んでいたようですが、その裏ではしっかりと私に猫なで声でお礼のようなことをメールで言ってきているのです(実はBさんを最初に起用したのは私なのです。A君、C君が私の配下なのは知っているはず)。これはつまり、A君の言っていることと私の考えていることが一致しているのか確認しにきているのです(A君が突っ張っているだけなのか、ということですね)。いやはや、敵も然る者です(こうは書きましたが私は敵とは思っていません。言葉のあやです)。

A君には、こちらが譲歩すればBさんもそれを理解して穏便な対応を期待できる、という読みがあったのでしょう。つまり、快く納品してくれて、今後のビジネスも継続できる、みたいな願望が。しかし、結果は逆でした。Bさんはますます要求を強くして、結果的にBさんは残念なことにビジネスを失いました。

これと同じ構図は、同じビジネスの社会、そして最近起きた南の島での出来事まで通じます。譲歩すれば、よい結果を期待できるだろうという淡い願望が招く悲劇ということでしょう。結果はどうなったか、皆さんはよくご存じですね。

では、今回の交渉をうまく運ぶためには、何が必要だったのでしょうか?それは、主導権(イニシアチブ)をいかにこっちに持ってくるかという戦略だったのではないでしょうか?主導権が先方にあれば、先方の言うことを聞くしかありません。今回は納期であり、今後のビジネスでした。しかし、今回は納期を破られても自分の実績的には大丈夫という保険があったらどうでしょうか。交渉が長期戦に移行すれば、大変なのはBさんかも知れません。

また、Bさんに頼らない人材ネットワークがあれば、Bさんの言うことを必要以上に聞く必要もなかったのかも知れません。これらの駒がまったくなかったA君は、Bさんに頼り、不本意ながらも要求を受け入れる、という選択肢しか思い浮かばなかったのだと思います。

Bさんを切った私がとてつもない冷血漢だと思われるでしょうから一言弁解しておくと、A君が最終通告を行った際に、多少なりとも態度を改めて、こちらが提案していた譲歩案(つまり本来の条件と間違った条件の折衷案)への譲歩に関心を持ってくれれば、そこまではしないつもりでした。しかし、A君へのほとんど恫喝に近い言葉と、私への猫なで声のギャップに、怒りを通り越して呆れてしまった、というのもあるのです。

話は大きくなりますが、国が主導権をとるとはどういうことか、しっかり考えて言葉を発し、行動して欲しいですね、と今の政権にはつくづく思うのです。

コメント

  1. 7 より:

    これは…
    やはりBさんを「切る」のが正解ですね。
    「切る」と書くと冷酷な感じがしますが、
    ここでの「切る」はBさんの低俗な部分を「切ってあげてる」
    という優しさなんですよね。
    Bさんがもっと低俗になる前に戒めてあげてるというか。
    間違ってる事は間違ってると言ってあげた上じゃないと、
    相手は正気に戻りません。←大陸

  2. なおさん より:

    7さん、どうも。
    Bさんも、A君ならどんどんいけそう、なんて思ってしまったあたりで、違う人だったらこんなふうにはならなかったな、とか思っています。
    まぁ確かに正論は必要だけれども、正論だけでは相手を納得させられない場合もあるわけで、そういうときの手管を備えているかが、交渉を成功させる条件でもあるのでしょう。