編集者としてのレーゾンデートルを示す久々の連載。前回の記事がないと何が何やらわからないと思いますので、最初に前回の記事を読んで下さいね。
「PDF校正で得られるもの」、続きです。
そこでまず、著者校(1)からPDFにしてみることにチャレンジしてみました。きっかけは、「PDFだけの方が便利だ。基本的に作業はPCの前に座ってやることが多いから。」という、ある著者さんの一言でした。
そのときは、著者さんがPDFで校正した結果を、私が校正紙に転記していくという不毛なことをしていました。これは、校正結果をデータに反映するDTPオペレータさんが、PDFを見ながらの修正作業は面倒、と言っていたからです。
これは私もある程度理解できて、校正の赤字の修正というのは校正とDTPソフトウェアを交互に頻繁に見ながら行う作業なので、アプリケーションをしょっちゅう切り替えるというのは意外とストレスになるのです。
それでも、金曜の晩にPDFを送ればその晩から校正を開始できますし、月曜の朝にこちらに校正結果が欲しければ、月曜の朝にPDFを送り返してもらえればOKです。宅配便を使うと、土曜の昼から日曜の夕方までしか使えません(土日しか使えない場合)。
このあたりで、著者さんの負担が減った、というメリットがありました。この方は、PDF上に赤字を入れることに抵抗感のない人で、そういったこともプラスだったのかも知れません。
また、送り返すための梱包作業、荷物を出しにコンビニや集荷所まで行く手間より、PDF上の作業の方にメリットを感じる人でもあったのでしょう。
こういう事情もありましたが、まずは著者校正をすべてPDFで済ますことに成功しました。これで、宅配便のやり取りによるデリバリーコストと時間を節約できました。
これに味を占めた私は、今年に入ってからの重量級の本(1,000ページを越える)でこれにチャレンジしてみました。しかも、このときは内校もすべて
PDFにするというものです。これを乗り越えるためには、こちらの著者さんにも納得してもらうこと、そしてDTPオペレータにもこの作業を納得してもらうことが必要でした。
著者さんは複数いて、もっとも持ち分の多い著者さんは当初あまり気が乗らないようでした。その方は、現物を少しずつ持ち歩いて、時間のできたときにどこで
も少しずつ校正したい、というタイプで、PDFだとPCが必要だから、というのが理由でした。しかし、何事もチャレンジ!という前向きなことをおっしゃっていただき、PDFによる著者校正に納得してもらえました。
次はDTPオペレータですが、たまたまチャレンジングな担当者ということもあってか、すんなり納得してもらって作業に入れました。それまではコメントなどの入ったPDFを見たこともなかったようですが、Adobe
Readerなどのソフトウェアの機能で、書き込まれた内容をすべて順番に処理できるために見落としが少なくなる、というメリットを見いだしたようです。
ということで、入稿までのすべての校正をPDFで済ませました。印刷所への入稿では、検版のためにプリント見本が必要ということで、やむなくプリンタ出力を行いました。
ということで、案外とうまくいったのではないかという感じですが、次回にまとめとしたいと思います。
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