またまた高野和明「グレイヴディッガー」、ノンストップのサスペンス。

今回の最近読んだ本の紹介は、高野和明の「グレイヴディッガー」。「ジェノサイド」「13階段」と紹介してきたけど、今回の作品は、江戸川乱歩賞受賞後の次回作。つまり、大賞受賞後、初の作品になるわけ。ということで気合いが入りまくった作品になっている。

中身の方は、書籍タイトルをまず解釈しよう。グレイヴ=grave=墓穴、ディッガー=digger=掘る人。つまり墓掘人かぁ。オカルトかと思いきや、思いっきり現代のサスペンスだ。

この作品のテーマを自己流に解釈すると、善と悪かな。何が善で、何が悪なのか。全編を通して考えさせられる。警察機構の醜さに著者は踏み込んでいるが、果たしてそれだけではない。罪もない普通の人、無辜の人々、そういったものが正しい表し方なのか、考えさせられる。

舞台は東京。事件はその北端で起きる。逃げる主人公。目標は東京の南端。追う警察と謎の組織。そしてグレイヴディッガー。果たして主人公は目指す病院にたどり着けるのか。

「13階段」の、作者本人による「あとがき」を読んでいて、氏が助言を得ていた映画監督岡本喜八氏の言葉「どっちが勝っているかということだろ?」がものすごく生きている作品だと思った。読者が気にするのは、追われている側と追っている側の距離なんだと。狭いのか、離れているのか。逃げ切れるのか、捕まってしまうのか。それを常に見せることなんだと。そういった意味では間違いなく「成功」だ。

もう少し具体的なことも書かねばなるまい。

主人公の八神俊彦は、ろくでもない人生を送ってきた(ブログ主のような)悪相の男。しかし、骨髄ドナーとして見ず知らずの女の子を助けることになる。その矢先、事件に巻き込まれる。「グレイヴディッガー」による中世の魔女狩りを模した猟奇的殺人が続く中、重要参考人として手配され、そしてなぜかわからない理由で謎の組織に追われる主人公。骨髄移植のリミットは迫っている。たかが一晩のチェイス。

いやぁ最高っす。ブログ主は、主人公のような人間は好きっす。加えて、彼を知る機動捜査隊のおっさん(名前忘れた)も。やっぱりね、人間は論理や理屈で割り切れないものがあるっす。この主人公だって、自分の過去とか追いかけられている理由とか、そんなの関係ないじゃないっすか。ただ、移植先の女の子を助けたい、それだけじゃないっすか。その気持ちに突き動かされて、難局を何度もくぐり抜けてきているわけじゃないですか。ホント、最高っす。兄貴!

というヨタは置いておいて、まぁ最初に1年以上前の死体がほとんど腐りもせずに発見されたとか、それがなぜか盗まれてしまったとか、殺される被害者がなぜか皆ドナーカードを所持しているとか、複数の殺人現場を移動するのは単独では無理なんじゃないかとか、そんな謎は実際に読めばわかること。

最後まで読めば、本当の悪は何で、本当の善は何か、わかるはず。個人的には、主人公には幸せになって欲しいね。そういえば、途中にあらぬ嫌疑を着せられた女医さんは、無実でよかった。こういうのって、伏線になるのかな?

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