望まない妊娠をパートナーがしたら、あなたならどうする?
こうなったら高野作品を全部読んでやる!ということで、今回はK・Nの悲劇。これまでこのブログで投稿してきた、エンターテインメント性の高い作品とは正反対の、シリアスなテーマを持った作品だ。
もちろん、「幽霊人命救助隊」だって、「グレイヴディッガー」だって、それぞれ「命とは?自死とは?」「正義とは何か?」のようなシリアスなテーマを持っていたが。
「K・Nの悲劇」は、タイトルにも書いたように、パートナーがいるならぜひ読んでみて欲しい作品だ。
この作品のテーマは、「命、妊娠、堕胎」である。
結婚、そして夫・夏樹修平の出版界での成功、分譲マンションの購入など、主人公・夏樹果波は幸せの絶頂だった。夫のベストセラー達成記念パーティの晩、恋人気分の二人は燃えた。その結果、果波は子供を身ごもった。
精神科医、磯貝裕次。彼は、不妊に悩む患者の自死未遂に遭遇し、休職する。その後、なぜか彼は夏樹夫妻の身に降りかかる問題を解決するために、奮闘することになる。
望まない妊娠。経済的事由による堕胎をやむなく決断したときから、夫妻には不可解なことが起きるようになった。果波に憑依する謎の人格。果たしてこの物語は、サイコホラーなのか、果たしてオカルトなのか。
K・N…。ひとりは夏樹果波。でももう一人は…?悲劇とはいったい何なのか?妊娠という課題に、なぜに精神科医が関わってくるのか?
これ以上はネタバレなので自粛。でも、妊娠した女性の、意外と多い比率で堕胎が行われているという事実。犯罪に巻き込まれた、母胎に危険がある、といった切羽詰まった事由ではない、まさに夏樹夫妻のような経済的事由での堕胎も法律の拡大解釈で普通に行われているという。
自分の話で恐縮だが、社会人を筆頭に、ブログ主は3人の子供を育ててきた(一部現在進行形)。ブログ主には、残念ながら夏樹修平の気持ちがわからないでもない。子供ができた。そのとき夫には、授かったという喜びとは別の、親としての責任感というか、先のことに関する漠然とした不安が襲いかかるものだ。
しかしそれはあくまでも感情の話で、厳しそうだから今回はあきらめようとか、そんな発想にはまったくならなかった。もちろん、母体に命の危険があるとか、そんなことなら別だが、授かった命をきちんと育てようと心に誓ったものだ。
そうでない場合。K・Nは、必死にそれを防ごうと思ったのではないか。鬼のように、修羅のように。授かった命を世の中に送り出せなかったばかりか、自らも命を落としたK・Nが。
我が子が授かれば、何とかしていこう、大丈夫という気持ちが産まれるもの。理詰めで考えるだけではなく、我が子と楽しく生きていくという気持ちが大事であると、あえて言っておきたいと思った。
最後は、よかったね、よかったでしょ、と言ってあげたくなるお話だ。
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