お金は銀行に預けるな―勝間和代

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

本のタイトルと内容にはそれほどの乖離はない本である。お金を銀行に預けるな、というのは、ほとんどただ当然でお金を銀行にあげて、好きなように運用させている、それが明らかな損失だというのが趣旨である。銀行の預金は、元本保証だから損ではないのでは?と思いがちであるが、それが大きな間違いであるということに気付くだけ、この本を読む価値はあるだろう。

銀行の定期預金などを組んでいる人ならわかるが、たとえば100万円を定期預金で預けていても、利息はせいぜい数百円である。食事代にもならない。ちょっと前までは、数十円であった。それでも利息を告げるはがきが送られてくる。はがき代、郵送費用の方が利息より大きいのではないのか?と思い銀行の担当者に告げても「規則ですから」の繰り返しで、不毛な利息の発生を告げるはがきが大きなコストをかけて送られてくるのであった。

それはさておき、我々がわずかばかりの利息で預けているお金で、銀行は何をしているのか?融資する、債券を買う、株を買う、などで運用しているのだ。つまり、ただ同然で入手したお金で、利息を払うよりははるかに高い利幅を得ているのだ。もしかしたら、その利幅は預金した人間が本来は得られるはずのものと思えば、明らかに損をしている、そういうことの気付きである。

単なるお金の話とは別に、銀行に預けたお金の運用方法は銀行の勝手、ということもある。つまり、預金者が好ましくないと思う企業や業界(サラ金やパチンコなど)にも融資され、利益を出している可能性もある。できれば、もっと人や社会の役に立っている企業や、環境に考慮している企業に投資して欲しいとか、そう思うだろう。だが、銀行に金を預けるだけでは間接金融となり、自らが融資先や投資先を選ぶことができない。もし、預けたお金が社会を悪くしたり、本来は潤って欲しくない人が潤うような用途に使われたら、やりきれない。

というわけで、正当な利益を得るための心構えと、自らが運用先をきちんと選別することの重要さを解いているのがこの本の部分だ。ほかにも、読んでみるべき点はいろいろあるが、気付きを与えてくれるという点が大きいだろう。実際に運用するには、まだまだ勉強は必要だが、そのとっかかりと勇気を与えてくれる点は大きい。

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