Favorite Artists―BJ(2)―One

最初に書いておいてしまうと、Bob Jamesのアルバムのネーミングには、法則性がある。実はそれはタイトルだけではなくて、ジャケット写真そのものにもあるのだけど。表題のアルバムは、文字どおり1番目のアルバムである。まったくひねりがないのだが、この傾向はFourまで続く。

One けっこうおどろおどろしいジャケットである。

このアルバムは、クリード・タイラーの主催するCTIというレーベルからリリースしているが、のちにBobは独自のレーベルTappan Zeeを起ち上げて、そこからリリースすることになる。

ONE
1974年
20AP-2005(LP)

Oneは、クラシックへの挑戦とも言えるような内容だ。Bob曰く、「なぜ皆がクラシック音楽にあれほど騒ぐのかわからない。これくらいの音楽はすぐにできる」と言ったか言わないか、とにかくそんなニュアンスのことを曰ってできたのが、このOneであるらしい。そのせいか、内容はクラシック音楽のようなもの、有名なクラシック音楽をアレンジしたものがメインとなっている。

A-1. Valley Of The Shadows

Bobの自作によるクラシックライクな作品。このアルバムでは、Bobのもっとも好きな曲だという。直訳すれば、「影たちの谷」か。打楽器を効果的に使った幻想的な出だしから、影が谷をさまようような感じをイメージできる。SEとしての笑い声のようなものが雰囲気を盛り上げる。音量の起伏が激しい。ブラスと打楽器のコントラストが絶妙。エンディングが異様に明るい感じなのは、そこで陽が昇るからなのであろう。影は朝日の前に消え去り、何事もなかったように昼間の谷の姿になるのである。

A-2. In The Garden(based on Pachellbel’s "Canon in D")

これは、パッヘルベルの「カノン」をアレンジした曲。Bob曰く、これはジャズにすごく適合するベースラインを持った曲なのだそうだ。リラックスさせる雰囲気を持ったフィーリング、そしてシンプルな進行など、短い曲の中にいろいろな要素が詰め込まれている。そう、タイトルのIn The Gardenは、庭のように魅力ある要素がちりばめられているからと言うことから名付けられたそうだ。

A-3. Soulero

これはボレロである。後半、徐々に盛り上がっていく感じがオーケストラ的だ。このタイトルは、「Soul」と「Bolero」の合成からなる造語である。

B-1. Night On Bald Mountain

超有名な作品。ロシアの音楽家ムソルグスキーの邦題「禿げ山の一夜」をフュージョン風にアレンジしたものだ。この曲を車で流せば、多くの人が「クラシック聴くの?」と尋ねるが(私はクラシックは聴かない)、途中でドラムやEGが入るに至ると、アレンジだと納得してくれる。権利関係は問題ないわけだが、原作の雰囲気を忠実に残しつつフュージョン風にハードに仕立てている。実は、このへんがBobの真骨頂とも言えるのだが、逆にキワモノ扱いされていた部分でもある。

B-2. Feel Like Making Love

ソールシンガー、ロバータ・フラックのアルバム制作に参加していたBobが、自身のアルバム「One」でもやってみようと思った曲だそうだ。このオリジナルは、日本でも「メイクラブのように」でヒットしたので、覚えている人も多いと思う。終盤の、エレクトリック・ピアノの掛け合いのようなパートが、すごくいい。私も、すごく好きな曲のひとつである。リズムセクションは、オリジナルとまったく同じだそうだ。

B-3. Nautilus

イントロが非常に美しい。車に同乗した吹奏楽部の女の子たちも「きれい~」と言ってのけた作品である。タイトルは、いにしえの潜水艦の名前であり、オウムガイのことでもである。どっちのイメージで捉えても構わない、幻想的な作品だ。水底をゆっくりと進む潜水艇のイメージもあるが、たたずむオウムガイのイメージでも構わないと思う。リズム的には勇壮な感じなので、やはり潜水艇のイメージなのであろう。イントロの音は、ヤマハのオルガンを使ったもので、鍾乳洞的なイメージがあるが、Bobは潜水艦のようだと感じ、このようなタイトルになったのだそうだ。

次は、「TWO」を行ってみる。

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