食堂の携帯バカ

またもや携帯ネタであるのだ。前回は、電車の中での微妙な携帯バカのやり取りを紹介した。今回は、食堂、昼飯時の携帯バカだ。

この一週間の富士山。天気がよいので、よく見えたのであった。

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その日は、非常にお腹が空いていたので、ふつうに定食を採ろうと思い、近くのメシ屋に入った。運良く、カウンター席に案内されたので、注文した揚げ出し豆腐定食の到着を、新聞でも読みながら待つことにした。

ここで「運良く」と書いたのは、カウンター席でなければ中央の中途半端なテーブルか喫煙席に案内されるからだ。

さて、何気なく隣の席の男を見ると、ホッケ定食を頼んでいたようだ。うまそうなホッケが目に入る。ちなみに私はホッケが大好きなのだ。しかしその男、携帯電話で会話中なのだ。大きな声で、メモをとりながら一生懸命に会話しているのだ。正直うるさいとも思ったが、まぁ一生懸命なようだからよいだろうと私も新聞に集中することにした。

そうするうちに、私の揚げ出し豆腐定食が到着した。大きめの豆腐が3きれ、これに鶏の唐揚げが3個。これにしめじやニンジン、長ネギの入ったあんがかかっている。トップには、水菜が盛ってある。実にうまそうだ。さぁ、これをやっつけるぞと思っていたが、隣の男はまだ会話中だ。おまえ、いい加減にしろよとそろそろ思い始めていたのは、その男、足を組み、ビジネスモードでますます熱が入った会話をしているからだ。そんなにビジネスしたいならさっさとオフィスに帰ってビジネスしろよと思うのだ。

う~ん、これではせっかくの揚げ出し豆腐定食の味もわからんぞ、反対の隣の女の子も、何となく不愉快そうだぞ。おい、お店の人、こういうのは注意しようよと思うのだが、その日のメンタリティは、なぜかアグレッシブではなかったのであった。

そうこうするうちに、その男の会話は終わった。やれやれ、これで静かに食事をできるかなと思っていたが、なにげにその男を見ると、なにやら一点を見つめて考え込んでいる。よせばいいのに、その男の膳を見ると、ご飯と味噌汁はほぼ空、ほっけは半身をつついた程度、付け合わせのししとうには手を付けず、箸休めのナスの煮浸しは放置のようであった(それにしても細かくチェックしているね、という突っ込みは、ナシ!)。

お前、なんだその食い方は!と説教のひとつもくれたくなるような様である。魚の食べ方もなっていないし、要するに野菜類には一切手を付けないようなその有様は、いかにも現代風の若い男子というような気がして、誠に気にくわないのだ。うん、僕たち、美味しいもの、好きなもの、気に入るものだけ食べていたんですよね、これが自分を大事にするってことですよね、僕たち、自分を大事にしたいんですって、そうかよ、わかったよ。自分を大事にするためなら食べ物を無駄にしようが関係ないんだな、そんなに自分が大事なら最初から自分の口に入るものだけを用意すればいいだろと、いわれもない熱が体を温め、脳みそもおかしなことになっているのであった。

そうこうするうちに、また電話がかかってきた。思考モードのその男は、また嬉々として電話を取り、「すいません、食事中で、本当にすいません。」といいながらもまたも会話を続行するのであった。すいませんと思うなら、さっさと食事を切り上げてオフィスにもどればいいじゃん、お前そもそももう食べていないだろと思いつつ聞いていると、またも熱の入ったビジネスモードに移行するのであった。

「私は迷惑かけたくない。」「こうして電話してくれて本当にうれしい。」など抜かしているが、こうして周囲に迷惑をかけ、電話してくれて本当に迷惑と思っている、周囲の人間のことは考えないのであろうか?そういえば、私が常に思っていることに、人には身内の仁義を重んじる人と、外への仁義を重んじる人の二種類がいるということがあり、今回は前者のパターンなのだろうな、と思った。

前者のような人は、電車内でも、「うん、本当にゴメンね!うん、また電話するからね。本当にゴメンね!うんうん、気にしないで。気にしていないから。じゃぁね。いいって!え?何?」ということを大声で長々と繰り返す人のパターンだ。後者の人は、「今、電車の中だから、あとで電話するね、ゴメンね。」と10秒ほどで終わらす人だ。まぁ、後者の人は前者の人にとって「冷たい」「大事にしていない」と思われるようだが、私は紛れもない後者のパターンだ。そのせいで発生したトラブル、いくほどか。

話が逸れてしまった。そうこうするうちに、私の食事は終わった。何を食べたのかよく覚えていないが、隣の男は、またも思考モードだ。冷めて乾いたホッケがかわいそうだ。必死にとったメモを私に見られまいと、必死に隠すその態度が哀れだ。見られたくない、聞かれたくない会話は人前ですべきでないという基本をこの男はわからないのだろうか。

やれやれ、そんなならマ○ドナ○ドでも行って片手で食べれるハンバーガーにコーヒーと行けばまったく問題ないのに、なぜに定食屋でしかも焼き魚を?と思って先に席を立った。振り返れば、またかかってきた電話に必死に応対している。もしかしてここがオフィスなのかと思いつつ、店を出るのであった。

疲れた。

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