3年奇面組―新沢基栄

少年時代のよき思い出、「3年奇面組」です。「奇面組」の名のとおり、奇天烈な面構えの5人組みを中心に繰り広げられる学園コミックの傑作です。ドリフのコントが今の小学生にも受けるように、この作品も今の小学生にバカ受けです(少なくとも我が家では)。

3年奇面組 (1) (集英社文庫―コミック版) 文庫版1巻。

まぁ何がよかったのかというと、ギャグそのものの面白さもあるのでしょうが、まずはネーミングでしょう。「奇面組」ですよ、「奇面組」。こんな名前が普通出てきますか?それに、「3年」なのです。「1年」でも「2年」でもない、「3年」なのです。しかし今になってみると、「3年」でないとどうにも収まりが悪かったような気がします。

そこで「3年奇面組」なのですが、ほかにも「骨組」(ほねぐみ)「番組」(ばんぐみ)「御女組」(おめぐみ)「腕組」「うでぐみ)といった集団が出てきます。皆が特色ある集団で、ガリ勉、番長、スケ番、スポーツ万能、といった具合です。そこにうまい具合に名前を引っ掛けているのです。只者ではありません(そういえば、「只者返し」とかいうワザもありました。何のこっちゃ)。

ネーミングの話は、これだけではありません。登場人物の名前を考えるだけでも大変だったでしょう。何しろ、皆さん、それぞれ名前に意味があるんですから。「奇面組」のリーダーは一堂礼(一同礼)、以下、冷越豪(レッツゴー)、大間仁(大魔神)、出瀬潔(出席よし)、物星大(物干し台)です。

もう、ここまでこじつけるとたいしたものです。普通の名前の人なんていません。担任は伊狩増代(怒りますよ、でも苗字も名前も、普通にありますよね、これ)、体育教師の石砂拓真(切磋琢磨、F1レーサーは佐藤琢磨です)、そういえば、音楽教師の名前は、「はそらしどれみ」でした。何のこっちゃ!

忘れてはいけません、このマンガのヒロインは、河川惟(かわゆい)、宇留千絵(うるちえ)です。「かわゆい」に「うるちえ」(うるせー、に引っ掛けているのでしょうね、でもちょっと苦しいですね)です。

ついでに、もっと行きましょう。もう、止められません。骨組のリーダーは骨岸無造(骨、きしむぞう)、番組のリーダーは似蛭田妖(ニヒルだよう、これは苦しい)、御女組のリーダーは天野邪子(あまのじゃくに引っ掛けているのでしょうね、実際、そうです)、腕組のリーダーは雲童塊(運動会、そのままですな。「ケロロ軍曹」でもネタにされていました)です。メンバーの名前を出していったらキリがありません。

すごい、名前を書いていたら、こんなに書けてしまいました。まぁ、紹介しているだけではつまらないものです。何かこう、「何でこんな名前なの?」というような漠然としたセンス、そういったものは実は子供が大得意なもので、作者もこのような部分を多分に持っていたと思われるのです。それに、畏れ多くもこの私も。

何しろ、小学生時代に、何でもいいから飛び出す絵本を作れ、と担任に指導され、作ったのが「妖怪58面相」でした。なぜ「58」なのか?それは、そのとき、「58」が頭に浮かんだ、としか言えないでしょう。しかも、なぜ「妖怪」なのか。今思い出すと、その妖怪は「唐傘小僧」をもっと不気味したような、そんなものだったように思います。「面相」は、当時、江戸川乱歩の少年探偵シリーズにはまっていたからでしょうね。

それに無理矢理ストーリーを付け、絵本として提出した覚えがあります。担任のフィードバックは、…なかったような気がします。さぞ、不気味な生徒に見えたでしょうね。でも、医院です。あなたの教え子は、こんなに立派な○○になりました!(○○には好きな言葉を入れる)

ということで、紹介になったのか、ならなかったのか、よくわかりませんが、「3年奇面組」を紹介させてもらいました。この作品、舞台を高校に移して「ハイスクール!奇面組」としてロングヒットとなります。それについてはまた後日…。

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