エッセイコミック「小人たちが騒ぐので」―川原泉

私の好きな漫画家、川原泉のエッセイコミック。白泉社の漫画雑誌「PUTAO」に連載されていた短編集です(PUTAOは廃刊になったので今はありません)。川原作品といえば割と長編のものが好みなのですが、こういった雑多な話もおもしろいです。

小人たちが騒ぐので (白泉社文庫) 白泉社文庫

ところで書名にある「小人」とはなんでしょう(ちなみにATOKでは「こびと」では変換できません。くだらん)。カバーをよく見ていただければわかるのですが、灰色(グレー)の妙な人形のようなものが一面に炸裂し、作者が頭を抱えています。

この人物は、「リトル・グレイ」。そう、自称火星人という怪しげな生き物なのですが、このシリーズでは作者の化身として登場してきます。「ブレーメンII」に出てくる火星人、といった方が今はわかりやすいでしょうか。

このシリーズのメインは、作者と編集者のやり取りが中心なのですが、そこは脱線もの、何かネタを見つけては強引な展開を図ります。RPG漫画、HAL(「2001年宇宙の旅」に出てくる狂ったコンピュータ)に汚染された電子機器から強引に展開する張作霖爆殺事件(スゴイ、「張作霖」は変換できる)、母親との確執、鼻笛など。

アシスタントとして登場する友人Mさんも全編にわたりいい味を出しています。

ところで、いつものいい読後感が欲しいよね、と思う人のために、「SERIE」という雑誌に掲載れた「ロレンツォのカエル」が収録されています。好きなカエルが実はお姫様だったという、この年では恥ずかしすぎる設定なのですが、こういうのはやっぱりこの作者独特といいますか。

「0の更新」もとい「0の行進」は、これが意味のあるのは出だしだけという、最後は籠場の幽霊を退治したとかという半分与太話なのですが、こう言うのもないと締まらないよね、というお話でした。

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