今年も終わりが近づいていますが、まさしく「電子出版元年」のような一年であったのではないでしょうか?電子出版、ないし電子書籍というものは、かれこれ15年ほど前からさまざまなチャレンジがありました。ボイジャーの「エキスパンドブック」が比較的有名で、「新潮文庫の100冊」などをラインナップしたり、それなりに普及してもよさそうなものでした。
結果的には、「エキスパンドブック」は成功しなかったと言えます。その理由はいくつか考えられますが、基本的にパソコンでの使用だったこと、ラインナップの乏しさがあったでしょう。先見の明こそあれ、時代がまだ来ていなかったということです。
今年、iPadの登場で、にわかに電子書籍は活気付きました。もちろん、それ以前にKindleといったデバイスもありましたが、日本国内ではサービスがないこと、あと日本語の対応がなかったことで、あちらではともかく日本ではまだまだ興味の対象でしかなかったのは事実です。iPadの場合、雑誌などの閲覧に適したカラー表示可能なデバイスで、一気に電子書籍の可能性を広げました。Appleの電子書籍サービスであるiBookは、Kindle同様に日本国内でのサービスはまだですが、アプリケーションとしての書籍は入手可能です。
ダイヤモンド社の「もしドラ」「適当日記」などは独自のビューワにて配信しています。
ところで、12/12の日曜日の日本経済新聞の社説におもしろいものがありました。「1台の電子端末でどんな本も読みたい」です。要は、読める本がデバイスが異なることで変わってしまうのはおかしい、といった主旨です。これはたとえば、シャープ製のテレビとソニー製のテレビで見れる番組が変わってしまうということで、そんな不便な状況は勘弁して欲しいといった主旨です。
かつてのベータマックス/VHS、HD-DVD/Blu-rayの競争を彷彿とさせるようなものですが、電子出版の黎明期の現在、いかにして主導権を握ろうか、各社は必死のようです。それもそのはずで、日本の音楽配信市場は、Appleにしてやられてしまいました。ソニーも頑張りましたが、総合力で負けました。その轍を踏みたくない、というわけです。
今、日本国内にどれだけの陣営があるかというと、「リーダー」を抱えるソニー、「ガラパゴス」を抱えるシャープ、大日本印刷・NTTドコモ陣営、凸版印刷・KDDI陣営など、乱立といってもよい状況です。
ある著者がいみじくも語りました。
「なぜ、作品の送り手である、我々著者は蚊帳の外なんだろう?」
結局、既存の出版においての主力プレイヤーである印刷会社、大手書店、取次などは、電子出版の普及によってビジネスがなくなる可能性があるため、生き残りをかけて必死なわけです。逆に、電子出版=ネットワークという絡みで携帯電話キャリアが名乗りを上げ、端末を普及させたい電機メーカーがさらにのっかってくるわけです。
これに加えて、「妙味」を得たい、電通といったところも。
力のある著者、たとえば「村上龍」などは、独自に編集スタッフなどを揃えて製品を作り、App Storeなどで配信することができるでしょう。ですが、自分の著作物を思うような形で作り上げ、配信してそれに見合う効果を得ることのできる作家は限られるでしょう。
出版社サイドは、著者との契約形態および配信のための技術研究など、コンソーシアムのようなものを作って、それはまた独自に動いています。
果たして、望ましい電子出版の形態というのはどのようなものなのでしょうか?機会があれば、かなり願望の入ったものをそのうちここで書いてみたいと思います。
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