幼き頃のいけない行いを思い出す、谷岡作品の集大成。
ということで、故・谷岡ヤスジ氏の「天才の証明」です。緊急追悼出版、とありますから没後の作品集です。かれこれ10年以上前になりますから、新刊で手に入れる術はなく、中古で手に入れました。それにしてもなぜ今頃谷岡ヤスジなのか?ということは、脇に置いておきましょう。
谷岡ヤスジ氏といえば、「ああいう絵」としか表現しようのないような画風と、「ヨルに近いアサーッ」「~しちくり」「鼻血ブー」などといった言い回しがさっと頭に浮かびますが、あれ以外、似たものを見たことがないということでは、もはや唯一無二と言えましょう。谷岡作品である、としか言えないものです。
「天才の証明」は、大きく過去作品のオムニバスと、江口寿史氏やしりあがり寿氏などによる追悼作品集で構成されています。相原コージ氏などはほとんど同じ絵で作ってしまっていますが(さすが)、しりあがり寿氏のようにストーリーだけ拝借しオリジナルの絵で再現した、というものもあります。
さて、オムニバスの方は、とても子どもに見せられるものではないので封印しておきますが(笑)、いけない子どもだった私は、父親が買ってくる「小説宝石」とか「小説現代」といったもの(だったかな?)に挿入される短編マンガを、本棚から探し出してこっそり読んでいたものです。当時、黒鉄ヒロシ氏の作品などもありましたね。大人向け小説に混じっていますから、中身も当然アレで、幼い日の私は罪の意識に戦きつつ、没頭したものでございます。
告白と懺悔が済んだところで、谷岡作品。読んでストレートに、ああ面白いと思うものではありません。あとに効いてきたり、何度も読むことで聞いてきたりするものであります。ウナギが、自分が調理される様子を自分で見ていて、ごみ箱の中から「お見事!」などと言っている作品は、シュールそのものでありましょう。バター犬、ムジ鳥、押しかけ豚マリーナ、村(ソン)の牛のタロなど常連のメンバーもしっかりおります。
ずっしり重く、読むのはけっこう大変なので、そのへんに置いておき、気が向いたときに気が向いたところを読むのがよいようです。けど置く場所には注意して下さい。あなたの人格評価に多大な影響を与える可能性があります。(もう遅いって)
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