またまた高野和明「幽霊人名救助隊」、生と死の狭間でちょっぴり笑えるエンタテインメント。

高野和明「幽霊人名救助隊」読了。本のレビューがほとんど週刊のようになってきたが、また感想など書いてみようかな、と。購入したのは文庫(文春文庫)だけど、けっこうなボリューム。もとは文藝春秋に連載されていたのだけど、600ページ近い。こんなに読めるの?と読み始めのときに思った。でもそれは杞憂。あっという間に、一気に読める。読まずにいられない。それは間違いない。

それにしても、この書籍タイトルで中身を想像できる人はいるのかね?う〜ん、今回はかなりネタバレっぽいので、知りたくない!という人はここで離脱を推奨。笑

テーマは、自死。というか生と死。何しろ、100人の自殺志願者に自殺を踏みとどまらせる、というお話なのだ。ありとあらゆる自死への道と、それを取り巻く人間ドラマがこれでもかとやってくる。真剣に向き合っていたら読み手も雰囲気に飲み込まれて沈んでしまいそうだが、それはさすがエンタテインメント。随所に挿入される「昭和ギャグ」が場を不自然に緩ませるのだ。

主人公「裕一」は浪人生。正確には元浪人生の幽霊。受験に失敗し、公園で首をつった。その後、なぜか彼は断崖絶壁をひたすら上り続ける。登り切った場所で出会う3人、実は彼らも幽霊。元ヤクザの八木、元経営者の市川、元OLの美春。実は全員自殺者なのだ。その4人の元に「神」が不自然にパラシュートで降臨。

100人の自殺を踏みとどまらせることができれば、お前たちを天国に送ってやる。

胡散臭いなぁ。でもやるっきゃない。ということで、かれら珍妙な4人組のレスキュー(救助)が始まるのだ。幽霊が、人命を、救助するのだ。書籍タイトルの謎はこれで解消だ。

詳しくは書かないが、ちょっとだけ。期限は何と49日(7週間)。救出対象は100人。彼らは新宿に降り立つが、その姿は誰にも見えない。しかも物を持つこともできないし、声を直接聞かせるわけにもいかない。それでどうやってレスキューするんだよ、ということになるが、そこはさすがにエンターテインメント。レスキューの最新兵器が神から支給されているのだ。

オレンジ色の「RESCUE」ロゴ入りのユニフォーム(文庫版の表紙にもあるぜ)。ゴーグル(10倍ズーム。スゴい)。携帯電話。ロープ。システム手帳。そして謎のメガフォン。これって何に使うの?というのは中を読んでのお楽しみ。

人が自死に至るのには、理由がある。死ねば何とかなると思っているというか、それ以外に思えなくなる。だけど、その人の「死」というのは主観的なものではなく、客観的なものなのだ。つまり、自分以外の人しか認識できないのだ。しかも、「死」の影響を受けるのも、自分以外の人なのだ。そう考えれば、おいそれと死は選べまい、と思う。

この4人は、なぜか死んでからも自意識があるのだ。どのように死んで、あとがどのようになったかも知っているのだ。だからこそつらいのだ。でもそれが、自殺を踏みとどまらせる原動力になっているのだ。皆、死んではダメだよ。生きるんだ、という強いメッセージになるのだ。

苦労しつつも、100人目の救出をギリギリでこなす。その100人目は誰なのか?その人を救うことによって、4人のうちの誰かも救われるのだ。そして、神のいう「天国」の正体とは?善を働いた人は死後に天国に召されるというが、果たしてそれはどういうことなのか?う〜ん、書きたいがやっぱり読んで欲しい。

昭和ギャグが炸裂するのは、裕一以外の3人が昭和に死んでいるから。平成に死んだ裕一とのやり取りが清涼剤になる。読んでて涙が出そうになるときもある。思わずクスリとしてしまうときもある。安堵のため息をつくときもある。人ってバカだなぁ、と思う。あるとき、ふっと何かに気付くことってあるけど、それは彼らのおかげなのかも知れない。

解説は、敬愛する養老孟司氏。さすが解剖学者。いい話を書いている。でも解説だけ読んでもやはり中身はわからない。なので、ここでちょこっと書かせていただいた。長くなってしまったけど、絶対に無駄にならないと思うので、ぜひ読んでみて下さい。

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