出版社や編集者はもういらない。そんな時代の到来も予想される出来事が出版界で起こっている。
…だそうだ。電子書籍の登場で、こんなことが盛んに言われたなぁ。と思ったら、これは何と1997年の日経新聞の記事である。17年前からこんなことが言われてきたわけだ。
手書きの日付があるから、1997年7月18日の日経朝刊、文化欄だと推測できる。この記事は上下になっていて、1回目は作家の村上龍氏を中心とした話、そして2回目は筒井康隆氏へのインタビューである。今は亡き江藤淳氏のコメントがあるのが何となくもの悲しい。
「電子ネットは文学を変えるか」とあるように、インターネットが今のように日常的でない時代、まだNIFTY-ServeやPC-VANなどのパソコン通信サービスが元気だった頃の話だ。先んじてホームページを開設した村上龍氏は、ついこの間に電子書籍時代の幕開けの象徴とも言われ、先見の明があるということはわかるが、業界の状況ってあんまり変わっていないんじゃないの?と思うのだ。
1日前の投稿じゃないけど、出版社と編集者の役割を正確に理解していれば、出版社や編集者が不要になる、なんて予測がいかに的外れかわかるだろう。ただ正確には、「出版社的・編集者的な役割」だが。形の上での出版社、編集者は不要になるかも知れないが、相当の役割を担う組織・人が必要なのは、未来永劫変わらないと思うのだ。
作家が編集者を雇い、自ら出版すれば、それは単にその役割を取り込んだに過ぎない。役割が不要になったとは言えないわけだ。
実はこの話は本質ではない。ボイジャーがエキスパンドブックを発表した頃から、いずれ本や雑誌は電子媒体に替わられると言われてきた。ものによっては、10年後には紙の媒体は1/4にまでシェアが下がるとまで言い切っていた。しかし現在でも、電子媒体のシェアは1割以下だ。伸びそうで伸びない、その理由はどこにあるのか?
個人的には、電子媒体というものの魅力が、まだまだ紙に追いついていないのだと思っていた。
とはいえ、状況は変わってきていると感じる。技術の進歩が、電子媒体の閲覧へのハードルをグッと下げた。また、良質なコンテンツを供給・流通させる仕組みも整ってきた。そして何より、スマホやタブレットの普及というライフスタイルの変化が大きい。ただちに1/4にまで下がるとは思わないが、今後は徐々に紙媒体のシェアは下がっていくだろう。かく言うブログ主も、コミック作品などはほとんど電子書籍で購入することが多くなった。
出版物の形態、流通が変わっても、やはり目利きをする人間やひとつの作品として作り上げる人間は必要だ。と思いたい。けど、リスクを追う立場の出版社だけは、相対的に地位は低下するかな、と思っている。
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