ここだけの話だが、私は鉄道が好きだ。学生時代は、近くの国鉄の駅の操車場に自転車で出向き、写真を撮ったものだ。また、鉄道模型(Nゲージ)も集めていた。それらはすでに手放してしまったが…。というわけではないが、こんなコミックスがあるというので読んでみた。存在自体はだいぶ前から知っていたが、読んだのは今が初めてなのであった。常に、流行っているときには脇で見るだけで、落ち着いたときになって初めて近づくという、時流に乗れない人間なのである。
小学館
鉄道マニアを知るための導入本として一巻だけでOK
イマイチ。
新しいジャンルの夜明け
キクチさんかわいい!
( =ω=.)<青春18切符だよ・・!!その1
のっけだが、第1巻を私が読み終わったあとで、息子(9歳)に読ませてみた(小学生に読ませるなっつーの)。「ギャグの意味がわからないよ…」、息子の弁である。いた仕方あるまい。でも、わたしにはわかる!比べるのも申し訳ないが、横見さんは、まさしく私と同じ種類の人間である。その程度のこそあれ…。
え?横見さん?そうそう、この人は、この漫画の案内人、トラベルライターの横見浩彦氏のことである。横見氏は、JR全駅制覇、私鉄全駅制覇という、前人未踏の偉業を成し遂げた人物である。この大人物を迎え、女性漫画家、素人編集者の組み合わせで「鉄」(テツ)を味わおうというのが、この漫画だ。
いやはや「濃い」内容である。第1話では、千葉県にある「久留里線」に赴く。よくあるローカル線の旅かと思いきや、「全駅降車」である。そう、横見氏は、「駅鉄」なのである。その名のとおり、「駅」に情熱を捧げる「鉄」である。私の場合は、「撮り鉄」ということになるだろうか。「鉄」というには情熱が足りなさすぎるが、昔は「乗り鉄」だったこともあるし、「模型鉄」だったこともある。
文字どおり、ちょっと脱線した(w)。全駅制覇は、「一日乗車券」や「青春18きっぷ」があれば可能だが、それだとダイヤが薄い(さっそく拝借)路線だと、あっという間に時間が経ってしまう。そこで横見氏の編み出した技は、「行きつ戻りつ」である。つまり、ダイヤを見ながら駅を飛ばしてそこで反対方向の列車に乗り、飛ばした駅で降りて、また反対方向に乗り換えて先に進む、といった感じである。この方法で、本数の少ないローカル線の駅をくまなく楽しんでいる。そう、楽しんでいるのだ。
この「楽しむ」というキーワードは、この作品にとって大事な要素である。普通の人が見たり聞いたりしても「え~」というようなことを楽しむ。駅を1個ずつ降りる、わざわざ各駅停車で行く、遠回りする、吹雪のときに行く、廃路線を歩く、古い車両を選んで乗る、こんなことは普通の人は好んでしないが、これを「楽しむ」のである。不便や面倒なんて関係ない、「鉄」を味合わせてくれるあらゆるものを「楽しむ」、それが真骨頂だろう。
「濃い」横見氏に、よい突っ込みを入れているのが女性漫画家の菊池直恵嬢である。ひょんなことから「鉄子」となったキクチ嬢だが、最初の戸惑いとは裏腹に、だんだんと「鉄」の世界に取り込まれていく。その兆候は、第1話にてすでに読み取れる。「待ち時間が苦にならない」「古い駅舎の方がよいと思う」などは、その兆候である。このように、「鉄」の世界は、それまで何の関係もなかった人も巻き込むほどの魅力がある(本当か?)。ただ、最後まで突っ込みはなくならなかったが、これは「普通」の人が「鉄」に突っ込みを入れる際のよい見本になりそうだ。
また、二人の編集者(イシカワ氏とカミムラ氏、イシカワ氏も、実は「鉄」であった)、漫画の連載されていた雑誌IKKIの編集長(これが筋金入りの「鉄」で、「スイッチバック鉄」とでも言おうか)も、いい味を出している。イシカワ氏とIKKI編集長という二人の「鉄」編集者に挟まれたカミムラ氏も、その天然とも言えるキャラクターで、横見氏とキクチ嬢の摩擦を緩和している。第1巻で早くもイシカワ氏からバトンタッチしたカミムラ氏も、結局最後まで降りることなく「鉄子」を続けたのであった。素晴らしい。
とまぁ、こんなわけで書いているとキリがないのだが、昔「鉄」だった人、「鉄」に少しでも興味がある、あるいは夫や家族が「鉄」である人には、ぜひ読んで欲しい作品である。私も、久しぶりに八高線に乗りたくなった。八高線で高崎まで行き、そこから上信電鉄で下仁田までなんて、普段は車で移動しているあたりだが、鉄道で進めば違った風景が楽しめるだろう。聞けば、上信電鉄では今「銀河鉄道999号」が運行中ということだ。松本零士ファンでもある私としては、無視できないところだ。夫が「鉄」である妻には、夫を理解する、会話を成立させる、一緒に行動しても苦にならないようにするためのヒントとして欲しいものだ。
全6巻、それに「プラス」がある。また、DVDもある。DVDは残念ながらこれからなのだが、横見氏のアクションが楽しめそうだ。機会を見て一緒に騒いでみたいと思っている。
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