本「万葉歌とめぐる 野歩き植物ガイド 春~初夏」(山田隆彦・山津京子著)を紹介します。これは、前日の投稿で、私の撮影した写真が載ったよ!とされた本。このときは、興奮と感動で非常に痛い姿を晒してしまいましたが、今日は冷静に本の内容など紹介したいと思います。
基本情報。太郎次郎社エディタス刊。四六判(128mm×188mm)、192ページ、オールカラー(4C)。カバーとオビはありません。表紙がカラーで、グロスP.P.加工となっています。本体価格は1,800円。
さて、書名からわかりますように、この本は植物図鑑です。「野歩き」とあるように野山で見かける植物を集めていますね。さらに、「春~初夏」とあるように今頃の季節(5月)を中心に見かけるものを集めています。すぐに役立ちそうです。
これだけだと、山渓あたりでも出しているポケット版の図鑑と変わらないようですが、「万葉歌とめぐる」とあるように、万葉集に歌われた花木(万葉植物)についてはその歌も並べて掲載することで、歌を詠んだ万葉人の思いを伝えようという意図を持って編纂されています。
何とも趣の深いことではありませんか。
万葉集には、花木について読んだ歌が1700首あり、読まれた花木は160種類もあるそうです(本書にあるのは63種類)。本書の初っぱなはカタクリ。万葉名も載っています。カタクリの万葉名は、堅香子(かたかご)。歌は、大伴家持。
もののふの 八十娘子らが 汲みまがふ
寺井の上の 堅香子の花
娘もカタクリの花も美しい、そんな歌ですね。
図鑑ですから、科名、一言説明、花期、生息地などの情報もあります。大きな花の写真に、実や葉の小さな写真も付いています(アタシのはこれですね)。
冒頭には、野歩きに必要な服装や道具の説明、撮影方法、観察のポイント、標本作り、植物用語などの解説。巻末には、野歩きスポット、用語集、索引があって、実用性も考慮されています。
図鑑として、けして多数の花木が収録されているとは言えませんが、よく見かけるものはほどよくカバーされていて、ちょっとした野歩きには十分に役立つと思います。ですが、この本の価値は、万葉歌と絡めたことで、山野で見かけた花木に親しみつつ、万葉人に思いを馳せる、そんな趣ある使い方をしてみたいものです(自分で書いていて自分には無理と思うあたりが情けないのですが)。
持ち歩きにはちょうどよい大きさ、メモ帳と一緒に活用しましょう。
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